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交通事故の後遺障害について、医学の国家資格を持ち、専門知識を武器に交通事故被害者の味方となる弁護士が詳しく解説します。
ご存知ですか?
交通事故の後遺障害は、治療を受けていればそれだけで適切な認定を受けられるものではありません。被害者の側でしっかりと証拠を作っていかなければ、後遺障害が残っても等級が認定されないことが多々あります。
そのため、後遺障害が発生しそうな重症なお怪我を負われた場合、交通事故から早期に、交通事故と医療に詳しい弁護士にご相談される必要があります。
適切な後遺障害の認定がされなければ、その損害は数百万円から数千万円になることもあります。
適切な損害賠償を得るために、知っていただきたいことがあります。
ここでは、交通事故による痛みと後遺障害について、東京都千代田区において交通事故事件のご相談を多く受ける理学療法士かつ弁護士が、詳しく解説します。
交通事故で外傷が発生したとき、その怪我自体から発生した痛みではない神経由来の痛みが発生することがあります。これを神経障害性疼痛といいます。
「疼痛」とは医学用語で痛みを意味する言葉で、痛みには大きく分けると2つの分類があります。
1つは、通常の痛みである「侵害受容性疼痛」です。
侵害受容性疼痛は、痛みを感知する神経の周囲に発痛物質があるか(怪我、炎症)、温度が異常に高い(やけど)か低い(凍傷)か、神経が圧迫されているか、引っ張られているかという状況で発生します。
もう1つが、神経自体が傷害を受けることで発生する「神経障害性疼痛」です。
神経線維に障害が発生すると、本来痛みが発生する侵害刺激がないにもかかわらず、痛みを感じてしまうという症状が発生することがあります。これを神経障害性疼痛といいます。
神経障害性疼痛は、国際疼痛学会(IASP:International Association for the Study of Pain)によって、「体性感覚伝導路の損傷や病変によって直接に引き起こされる痛み」であると定義されています。
体性感覚伝導路とは、痛みを発生させる侵害刺激を神経線維が知覚し、それを脳まで伝える道順のことで、この途中で神経が傷害されていることで痛みが発生するのが神経障害性疼痛です。
神経障害性疼痛の診断には、
① 障害神経の解剖学的神経支配に一致した領域に観察される感覚障害の他覚的所見
② 神経障害性疼痛を説明する神経損傷あるいは神経疾患を診断する検査所見
が重要であるとされています。
まず、「障害神経の解剖学的神経支配に一致した領域に観察される感覚障害の他覚的所見」についてみていきましょう。
感覚神経は、身体の部位とその部位を支配する神経がどの高さにある脊椎骨(いわゆる背骨)の間から背骨の中にある空間に入るかが決まっています。そのため、感覚障害が発生している部位が明らかになれば、第何番目の神経に傷害が発生したかがわかることになります。
また、「他覚的所見」とは、自分自身で痛みやしびれを感じるといったことではなく、検査を行って明らかな異常があると認められることを指します。
さらに、「神経障害性疼痛を説明する神経損傷あるいは神経疾患を診断する検査所見」とは、その神経障害がどのようなきっかけでおこったと考えられるかという受傷機転や、その後の患部の画像所見や検査所見を指します。
例えば、交通事故で骨折をした際に、その骨折に対して手術を行い、その手術中に神経の断裂が確認されている場合や、神経伝導速度検査を行って、骨折した部位と関連する感覚神経について神経の異常が確認された場合に、受傷によって神経の障害が発生したことが明らかになります。
神経障害性疼痛の発生原因
神経障害疼痛は、その発生原因について、末梢性と中枢性の原因が考えられています。
また、神経障害性疼痛の発生機序は、いまだ不明瞭な部分もあり、多くの研究結果が発表されています。
神経組織が損傷すると、本来存在しなかった場所に異所性のナトリウムチャネルが発現することがあり、これを原因として異常な神経の働きが起こり痛みが発生することがあります。
通常、神経線維の細胞内はK(カリウム)イオンが多く、細胞外にはNa(ナトリウム)イオンが多くなっています。そこに侵害刺激が加わると、Naイオンチャネルが開き、細胞内にNaイオンが流入します。
細胞内にNaイオンが流入すると、それにより神経細胞の膜電位に変化が起こり、これが電位依存性Naイオンチャネルを開き、活動電位を発生させます。この活動電位が痛み刺激として脳まで伝えられ、脳で痛みを認識することになります。
ところが、異所性Naチャネルが発現すると、本来痛み刺激が発生しない場所で痛み刺激と感じられる神経活動が発生してしまい、これが痛みとして感じられるのです。
α(アルファ)受容体は、鎮痛物質であるノルアドレナリンと結合してK(カリウム)イオンチャネルを開き、神経線維の膜電位の低下を起こします。神経線維の膜電位の低下が起こると、痛みを伝える神経線維の活動電位の発生が抑制され、痛みが抑制されます。
ところが、交通事故などの外傷で神経線維が損傷又は切断されると、切断または損傷された神経線維は中心部から新たな神経線維を伸ばします。これを発芽(はつが)といいます。
発芽した神経線維がいくつかまとまって神経腫が形成され、この神経腫に異所性α受容体が新生することがあります。
この神経腫がノルアドレナリンと結合すると、本来の作用とは逆に神経細胞の膜電位を上げることになり、活動電位が発生します。この活動電位が痛み刺激として脳に認識されることになり、神経障害性疼痛が発生します。
神経細胞では、侵害刺激があるとそれぞれの侵害刺激に対応したチャネルが開きます。
TRPV1チャネル(heat-and capsaicin-sensitive transient receptor potentioal vanilloid channel)は、痛みを伝える神経線維であるAδ(デルタ)繊維とC繊維に存在していて、熱刺激と唐辛子の成分であるカプサイシンに対応するチャネルです。
そして、炎症により放出されるブラジキニンやATP(アデノシン三リン酸)が存在すると、TRPV1チャネルが過敏化し、通常では活性化しない35度程度の熱で活性化して神経の異常興奮を起こすとされています。
この神経の異常興奮が、神経障害性疼痛となるのです。
交通事故で中枢から末梢へ至る交感神経線維が損傷すると、損傷した神経線維がその神経線維を後根神経節(脊髄へ入る前の神経の通り道)まで伸ばし、結合することがあります。これを発芽といいます。
この発芽が起こると、本来痛み刺激ではない交感神経の信号が、痛みを伝達するAδ(デルタ)繊維とC繊維を刺激し、痛み刺激が発生します。
健康な状態では、触覚を伝える神経線維であるAβ(ベータ)繊維は、痛みを伝える神経線維であるAδ(デルタ)繊維やC繊維の二次ニューロン(刺激を伝える道順のうち、2番目の神経細胞)との連絡はありません。
ところが、交通事故による外傷などで神経が傷害され、Aβ(ベータ)繊維の障害部位から神経線維が伸びる発芽が生じると、本来は連絡していないAδ(デルタ)繊維やC繊維の二次ニューロンとつながることがあります。
すると、触覚刺激として入力されたはずの刺激がAβ(ベータ)繊維から痛みを担当するAδ(デルタ)繊維やC繊維の二次ニューロンに連絡され、痛み刺激に変換されて脳へと到達します。
このような状態では、身体を触っただけで神経障害性疼痛が発生することになります。
痛み刺激が継続すると、脊髄にある二次ニューロンの膜電位が増強され、活動電位が発生しやすくなります。そして、この増強が長期間続くと、刺激の入力が無くても痛みが継続することになります。
以上のように、神経障害性疼痛とは、神経が傷害されたことをきっかけとして、神経細胞近くのイオンの変化や神経線維自体の所在や連絡に変化が生じ、それらによって本来は発生しないはずの痛み刺激が発生する疾患であると考えられています。
神経障害性疼痛の後遺障害
神経障害性疼痛は、従来カウザルギーという病名で診断されており、現在はCRPSという診断名がつけられる疾患です。
神経障害性疼痛の後遺障害の要件は、厳格に定められています。
そのため、神経障害性疼痛であっても、それが証拠上立証できない限りは通常の痛みとしての後遺障害の認定になります。
このように、後遺障害の認定は細かく基準が決められているため、お怪我の状態に合わせて適切な検査結果をそろえて後遺障害の申請を行わなければ適切な後遺障害が認定されません。
そのため、後遺障害の申請は、お怪我の状態を正確に把握し、後遺障害診断書などの医学的資料を適切に把握できる弁護士が行うことが理想的です。
ところが、依頼する弁護士によっては、お怪我の状態やカルテ、診断書を正確に把握することができません。
ぜひ、後遺障害に詳しい弁護士にご相談ください。