〒102-0084 東京都千代田区二番町9番3号 THE BASE麹町
電話受付時間 | 平日9:30~16:00 |
---|
定休日 | 土・日・祝日 |
---|
交通事故の損害賠償は、治療期間や後遺障害の等級によって金額の計算がある程度一律にできる分野なので、弁護士の中では比較的手を出しやすい、新人でも担当しやすい分野であると認識されているところがあります。
たしかに、後遺障害の等級がしっかりと認定されていて、相手方もほとんど争わない場合には計算をしやすい事件であるといえます。
ところが、それはあまり交通事故事件を扱わないか、積極的に被害者側の弁護士として活動をしていない弁護士による認識なのです。
実際には、交通事故事件には高度な医学知識が必要になることが多々あります。
具体的にどのような場面で医学知識が必要になるか見てみましょう。
交通事故の損害賠償にとって後遺障害の等級の認定は非常に重要な点で、認定があるか否かで示談金の金額が数千万円変わることも多くあります。
しかし、すべての交通事故被害者の方が後遺障害の等級の申請を行うわけではありません。むしろ、後遺障害の申請を行う方は、交通事故の被害者の総数からすると少数であるといえます。
後遺障害とは、明確に基準が定められていて、その基準に該当しなければいくら交通事故によって障害が生じていても、後遺障害の認定はされません。
また、後遺障害の申請をするためには、主治医の先生に後遺障害診断書を作成してもらい、添付書類をそろえて申請を行う必要があり、結果がわかるまでには相当の時間がかかります。
後遺障害診断書の作成期間は2週間から1か月、審査期間には2,3か月、後遺障害の種類によっては半年以上の期間がかかることがあります。
そのため、後遺障害の申請を行うと、かなりの期間待たなければならないのです。
このような事情から、後遺障害の申請は、それに該当する可能性がある方のみが行うべきなのです。
しかし、それを検討するには、医療画像の検討や、依頼者からの聞き取りによる症状の把握、カルテの内容の検討が必要になります。
例えば、カルテを見て関節の角度が後遺障害の基準に該当するのかを検討する際、
Knee Rt. Flex 130°、Ext 0°passive
Lt. Flex 100°、Ext 0°passive
という記載があったとします。
この記載は、右の膝関節について、セラピストが屈曲させたときの角度が130度、伸展の角度が0度、左については100度、伸展の角度が0度であることを表しています。
この角度は後遺障害の等級の基準に該当しませんので、膝関節については申請をしても等級が認定される可能性はありません。
後遺障害診断書は医師が記載するものなので、診断書を書いてもらってからその角度が後遺障害の基準に該当するかを検討することも可能です。
しかしながら、以前担当させていただいた事件で、ご本人は不自由がある状態に慣れていてしまい、特に不自由は感じないとおっしゃっていた件で、カルテを確認したら後遺障害の基準に該当していたことがありました。
このような場合、かりにご本人のお話のみで事件の方針を決めていれば、後遺障害診断書すら作成せず、その方の場合は数百万円の損失を被っていたことになります。
また、後遺障害診断書は一定の様式が決まっており、医師が必要だと考える医療情報について記載しますが、ある方の場合では主な関節角度のみを記載していて、後遺障害の基準となる運動について記載がされていないことがありました。
医師の先生方は後遺障害の基準をご存じない場合がほとんどですから、記載してもらいたい情報は弁護士の方から積極的にお伝えしなければ後遺障害について非常に重要な情報がもれてしまうことがあります。この場合は記載が必要な個所についてアドバイスをして医師の先生に追記をしてもらいました。
この場合もそのまま後遺障害診断書を申請資料としていれば等級は認定されず数百万円の損失が生じていたと思われます。
後遺障害の理想的な申請の形は、弁護士が依頼者について後遺障害が認定される可能性がある部位について、病院へ検査や測定個所を指定して後遺障害診断書の作成をお願いし、出来上がった診断書について弁護士がチェックをした上で申請を行うというものです。
このように、後遺障害の申請をするタイミングで、医療知識は非常に重要な点になります。
後遺障害の等級の認定は、多数の方の被害を補償するためのものなので、公平でなければなりません。
そのため、等級の審査の段階では客観的な資料が非常に重視されます。
具体的には、MRI、CT画像やその他の検査結果です。
ところが、交通事故で負った怪我についての後遺障害が見通せなければ、後遺障害の申請に必要な検査がわかりません。
例えば、交通事故で膝の靭帯を損傷した方が、膝の打撲、捻挫と診断され半年以上経過した時点で弁護士に相談された場合、そのタイミングでMRI撮影を行い靭帯損傷が明らかになったとしても、事故直後の医療画像がないため後遺障害の等級は認定されません。
かりにこの件で交通事故直後にMRI画像が撮られていて痛みについて12級が認められた場合、慰謝料だけでも裁判基準の満額で290万円が認められます。しっかりとした検査の重要性がわかると思います。
理想的な流れは、交通事故直後に弁護士に依頼し、弁護士が後遺障害を見据えて検査項目などを整えていき、しっかりとした証拠を基に後遺障害の申請を行うという形です。
また、顔面骨骨折をした方について嗅覚障害(匂いがわからなくなる障害)が生じた場合、これが後遺障害と認められるためには特殊な検査が必要になります。しかも、その検査は交通事故の発生から近い時期になされていなければなりません。
しかしながら、この検査は病院では通常行われない検査であるため、患者側から積極に検査の実施をお願いしなければ検査はされません。
そして、この検査がない場合、後遺障害は認められません。
かりに嗅覚が全く失われていると認められた場合、これも12級となり裁判基準の慰謝料の満額は290万円になります。
このように、交通事故の被害者は、専門知識がある弁護士がしっかりとフォローを行わなければ多大な損失を被る可能性があるのです。
交通事故の損害賠償について示談が出来なければ、被害者側から裁判を起こさなければなりません。
その場合、被告は加害者本人となりますが、実際には加害者が加入していた保険会社になります。
保険会社側は、被害者の主張する損害賠償金について、必ず減額の主張をしてきます。
その場合に、ほとんどの件で保険会社の顧問医の意見書が証拠として出されます。
この意見書は、被害者の医療画像やカルテ、医療の実務経験から言って、被害者の怪我は軽いものだから損害賠償の金額も小さくなるというものです。
数十万円の金額の違いで裁判まで行くことはそれほど多くありませんから、ここで争われる金額は、数百万円から数千万円の単位になります。
保険会社の顧問医は保険会社から給与をもらっている立場なのですから、当然保険会社に有利な意見しか記載しません。実際に裁判所で証拠とされる意見書は、この画像、カルテ、医療実務を踏まえてそこまで断言はできないのでは、という内容の非常に一方的な意見なのです。
ところが、保険会社の医師の意見書は医師が記載したものですから、医療知識のない裁判官からすれば信用性があるものに見えます。
ここでかりに医療知識のない弁護士が担当していると、相手方の医師が記載した意見のどこまでが事実で、どこからが医師の考察で、どこが反論可能な部分なのかが判断できません。そのため、有効な反論を行うことが困難なのです。
また、被害者側の弁護士は被害者のカルテを踏まえて積極的に損害を主張していかなければなりませんが、一般の弁護士にとってカルテを読むことは簡単なことではありません。
重症な怪我で入院、手術をした場合、そのカルテの量が数百ページに及ぶことは通常のことです。その中から、必要な情報を読み取っていかなければならないのですが、カルテは医師、看護師、その他の医療スタッフが読むことを前提に書かれているものですから、医学の共通認識を踏まえて記載されています。
例えば、カルテの記載は、SOAP形式で書かれていることが多いのですが、このSOAPとは、Sが患者からの訴え、Oが客観的な状態、Aが医療従事者による評価、Pがそれに対するプランとなっていて、一目でその記載がどのような意図で書かれているのかわかるようになっています。
ところが、そのことがわからないと、カルテの内容がしっかりと読み取れません。
また、医療の現場では時間がないのが通常なので、可能な限り時間を省略するため、多くの略語や専門用語が使われます。
例えば、
「TAにてtibia Fx.peroneal nerveマヒ疑い。TA収縮あるもdrop footみられる。Shoe horn brace 処方。」
というカルテの記載は、
『交通事故により脛骨骨折を受傷。腓骨神経麻痺疑い。
(腓骨神経が支配している)前脛骨筋に筋肉の収縮は見られる(ので腓骨神経は完全に断裂したわけではない)が、(腓骨神経麻痺に特徴的な症状である)下垂足の症状がみられる(から腓骨神経麻痺だと判断した)。
(麻痺により足が持ち上がらず歩くときに足が引っかかって転倒の危険があるため、足首の位置を固定する)短下肢装具を処方した』
という意味になります。
予備知識がない状態でカルテを読む事の難しさがお分かりいただけるかと思います。
このように、単語の意味がわからないと、一つ一つの単語の意味をしらべていかなければならず、また単語の意味が分かってもその前提となる医療知識がなければなぜそのような判断がされたのかを理解できません。そのような状態では、数百ページのカルテを読むには膨大な時間がかかりますし、その内容を正確に判断することは非常に困難です。
そのため、カルテの内容を把握し、それを基に損害賠償の根拠にしていくというのは、医学の専門知識がなければ非常に大変な作業になります。
弁護士は、通常法学部を出て法科大学院(ロースクール)を修了した後に司法試験に合格するか、予備試験という試験に合格して受験資格を得てから司法試験に合格した後、司法修習という実務研修を受けた後に弁護士として登録します。
そのため、当然、新人の弁護士には交通事故の損害賠償の知識も医学知識もありません。
弁護士は、新人の間は法律事務所に所属し、少しずつ事件を担当しながら、個々の事件の専門知識を吸収していくことが多くなっています。
この過程で、素人だった医学の知識についても、担当した事件に必要な部分を少しずつ学んでいくのです。ですから、交通事故の事件を数十件担当した程度では、交通事故事件を担当するのに必要な医学の知識を学ぶことは到底できません。
このような状態では、後遺障害の申請にどのような検査が必要になるかをアドバイスすることはできませんし、後遺障害の申請の際に重要な証拠となる後遺障害診断書の内容を見ても、それが後遺障害の等級の審査においてどのように判断されるかを把握することはできません。
交通事故も他の分野も扱う弁護士と、ほぼ交通事故事件だけを扱っている弁護士では、1年間に扱う交通事故事件の件数が全く違いますから、医学の知識の量も違います。
そして、上に書いているように、医学知識が乏しいと、後遺障害の等級が適正に認定されない可能性が高くなり、その場合、数千万円の損失が生じてしまう可能性があります。
では交通事故を専門に扱う弁護士であれば安心か、というとそんなことはありません。
当事務所の弁護士が過去に担当した交通事故事件の相手方の弁護士には、交通事故を恐らく数百件は担当したことがある弁護士の方であっても、医学的に誤っている主張をしてくることがあります。
例えば、神経の損傷が受傷部位とずれているから被害者側の請求している損害賠償は理由がない、という主張がされたことがありました。しかし、実際には神経の損傷部位と受傷部位は一致していました。これは一見すると位置がずれているように考えられる部分なので、解剖学を習う際に必ず覚えさせられる部分です。
なお、この事件ではそれを指摘し、こちらの主張が採用された結果となりました。
このように、交通事故事件を相当数扱っている弁護士であっても、その医学知識には不安があります。
当事務所の弁護士は、国立大学医学部の保健学科で理学療法士となるため解剖学、生理機能学、運動学などを4年間専門に学びました。解剖学では実際のご遺体で筋肉、骨、神経などの配置を観察させていただきました。
大学卒業後にリハビリテーション業務を行う国家資格である理学療法士免許を取得し、実際に約3年間病院でリハビリテーション業務を行いました。
弁護士は法学部を卒業しそのまま弁護士に、医療従事者は医学部を卒業しそれぞれの資格をとって医療従事者になることが通常ですので、当事務所の弁護士のように医療従事者かつ弁護士という弁護士は日本全国でもほとんどおりません。
病院で担当した患者様の疾患は多岐に渡り、骨折、脳卒中(脳出血、脳梗塞)、脊髄損傷などの方のリハビリテーション業務を多数担当しました。
そのため、このような疾患の方の回復過程を熟知しています。
また、障害者手帳の申請や後遺障害の申請のための体の関節角度の測定なども行っていましたので、交通事故の後遺障害の申請のために作成される後遺障害診断書の作成にも、作成者側として何度もかかわったことがあります。
そのため、後遺障害診断書に記載するべき関節の運動や、それに伴う症状が容易に想起できます。
このような知識から、後遺障害の等級の申請を行う際に、何が必要になるのか、修正が必要であればどのように修正すればよいか、通常の申請では使用しない補足資料などが必要かなどを、医療従事者の立場から検討することができます。
このような検討は、通常の弁護士には大変困難なことです。
また、裁判においても、加害者側の医師の意見書の内容を正確に把握することができます。
そのため、事実で争えない部分、一般的な共通認識の部分、その認識とその事件での相違点を把握し、ピンポイントで反論を組み立てることが可能です。
さらに、医学的常識や実際の病状を把握できず後遺障害の等級が認定されなったときに、異議申立により、適正な等級の認定を勝ち取ったことも複数件あります。
このように、当事務所の弁護士は一般的な弁護士と比較して圧倒的な知識を有しております。
ぜひ、適正な損害賠償の獲得のために、専門の知識を有する弁護士にご相談ください。