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交通事故が起こったすぐ後に弁護士に相談される方は多くはありませんが、実は交通事故事件については交通事故後すぐに弁護士に相談した方がよい結果につながることが多いのです。
その理由について、東京都千代田区において交通事故事件のご相談を多く受ける理学療法士かつ弁護士が、詳しく説明します。
後遺障害の基礎知識(詳しくはこちらへ)で記載しているとおり、交通事故の被害者の方にとって、後遺障害の等級が適切に認定されるかどうかは、最も重要なことだといっても過言ではありません。
なぜなら、後遺障害が認定される場合とされない場合では、損害賠償の金額が数百万円~数千万円という範囲で変わってくるのです。適切な後遺障害の認定がされないと、本来支払われていたはずの数千万円の損害賠償が支払われなくなってしまうことがあるのです。
そのため、交通事故の後遺障害の申請の手続きは、非常に重要なものであるといえます。
そして、後遺障害の申請の方法には事前認定と被害者請求という2つの方法があります(手続きの具体的な流れはこちらへ)。
このうち、事前認定とは、相手方の保険会社が手続きを行い、被害者請求は被害者自身が相手方の保険会社を通さずに手続きを行います。
事前認定の際、保険会社は自身が必要であると考える証拠を添付することができます。具体的には、保険会社の顧問医が作成した、当該被害者の怪我が後遺障害に該当しないと判断する意見書です。
具体的な事件をご紹介します。
Aさんの症状は交通事故の発生日から半年間経っても残ってしまい、後遺障害の申請を行うことになりました。
その際、相手方保険会社の担当者から、
「後遺障害の申請をされるのですか?Aさんは症状の訴えが他の方よりも大げさなようですし、当社ではAさんの交通事故のお怪我については後遺障害の等級はつかないものと考えています。Aさんの医療画像について当社の顧問医にみてもらいましたが、『後遺障害には該当しない』という見解でしたよ。その意見書も申請の際には添付させていただく予定です。」
と言われたのです。
Aさんのお怪我は、交通事故発生日から半年間が経過しても確かに残っており、症状の聞き取りすらおこなっていない保険会社の担当者に後遺障害の等級の有無について意見をもらう必要はありません。
しかも、むち打ち症で問題となる14級という等級は、そもそも医療画像からは症状の有無が判断できないけれども、症状があることが推認される、という等級なのです。Aさんの件は画像のみで後遺障害があるか否かを判断するケースではありません。そのような基本的なことも踏まえない発言には、呆れとともに非常に不快感を覚えました。
しかし、後遺障害の等級の申請において、相手方保険会社の顧問医が作成した意見書が提出されれば、後遺障害の等級の審査機関はそれを一つの資料として検討せざるを得ません。
交通事故の被害者の置かれている不利益な状況に、忸怩たる思いを抱きました。
当時から、後遺障害の申請は被害者請求で行っておりましたので、当然Aさんの件も被害者請求で申請を行いました。これにより、保険会社の担当者がいう意見書は等級審査の資料とはなりませんでした。
Aさんの後遺障害は、無事に14級との認定を受けました。
交通事故の損害賠償の金額も、この等級を前提として請求を行い、無事示談が成立しました。
この件から、やはり事前認定による後遺障害の申請は被害者に不利益になりうると強く感じました。
以上から、後遺障害の申請を事前認定で行うことは、交通事故の被害者にとって非常に不利益が生じる可能性があります。そのため、申請は原則として被害者請求で行うべきだと考えています。
ただし、後遺障害の申請の手続きは非常に煩雑です。そのため、弁護士に依頼して、被害者請求を行うことをお勧めします。
また、弁護士であっても、被害者請求ではなく事前認定の手続きで後遺障害の申請を行うことがありますので、弁護士に依頼される場合は、後遺障害の申請を被害者請求で行っているかをご確認されたうえでご依頼されることをお勧めします。
後遺障害の等級の審査は、損害保険料率算出機構という組織が行います。そして、1度認定された等級に不服がある場合、「異議申立」という制度があり、何度でも審査を求めることができます(制度の詳細はこちらへ)。
ところが、1度認定された等級は、異議申立によって覆る可能性が5~6%であり、ほとんど覆る可能性がないのです。
そのため、後遺障害の等級の申請は、初回の申請で可能な限り証拠を揃えて行わなければなりません。
しかも、等級の認定の判断がされる際に重視される医療的な検査結果は、障害の原因となった交通事故発生時点から早期の段階で行われていなければなりません。
そのため、後遺障害の申請の時点で弁護士に依頼したとしても、適切な後遺障害の等級が認定されるための証拠が足りず等級の認定がなれないということが多々あるのです。
交通事故のお怪我は、事故後早期から交通事故に詳しい弁護士に依頼され、適切なタイミングで必要な検査を行っていかなければ、適切な損害賠償が支払われないのです。
また、交通事故で生じたお怪我からどのような障害が生じうるかは、医学的な分野に詳しい弁護士でなければ予想できないため、専門の弁護士に依頼しなければ、せっかく早期に弁護士に依頼していても、後遺障害が認定されなかったということになってしまう可能性があります。
まれに、交通事故の直後や怪我の治療中に医師の先生から「後遺障害は第〇級になると思いますよ」と言われたとおっしゃる方がいますが、医師の先生方は後遺障害の専門家ではありません。多くの交通事故の患者様を担当されて後遺障害の等級に詳しい先生はいらっしゃいますが、あくまでも後遺障害の等級の判断は後遺障害の申請時点の証拠に基づくものです。そのため、事前に医師の先生に後遺障害の見通しについてお話を受けた方でも、その見通しと違った結果になることがあります。
また、同様に、1度弁護士に相談したときに「後遺障害は第〇級になると思いますよ」と言われた場合であっても、怪我の回復状態や申請時の証拠によって想定と違う後遺障害の等級になることもあります。「〇〇骨折なら第〇級」というような基準はありません。
さらに、後遺障害の等級の審査を行う担当者には、医学的素養がありません。これは組織の募集要項や、実際に調査担当者をされていた方のお話から明らかです。
そのため、大学で全く医学とは関係のないことを学んでいた方が、組織に入られてから研修を受け、等級の審査業務を行われているのです。
審査機関に顧問医はいますが、申請される件数の多さや医師の勤務に支払われる給与を考えれば、ほとんどの事案は顧問医の意見を求めないまま審査結果が出されると考えられます。
これを前提に考えると、医学従事者であれば当然認識できる事柄について、一切考慮されないまま審査がされていることになるのです。
実際に、異議申立の段階から担当させていただいた事件について、初回の申請の際に揃っている証拠から想定される等級が12級の方が、非該当(何の等級も認定されないという判断)と認定されていました。
このような事例は、審査する担当者に医学的共通認識や知識が欠けているために、後遺障害診断書や医療画像から情報を読み取れきれず、適切な認定ができていないことが原因だと考えられます。担当させていただいた事件では、その方の症状が、交通事故直後の画像、回復状態から考えて当然12級に認定されるべき事案であることを示すため、神経の走行を解剖学の書籍から抜粋して証拠として申請書に添付しました。また、その症状が医学的にどのような理由で起こっているのかを、医学的知識がない方でもわかりやすいように述べた異議申立書を作成して異議申立を行いました。これにより、無事12級に認定されました。
このように、交通事故の被害者側は、医学的知識がない方に対してなぜ後遺障害が発生しているのかを説明することが求められるのです。
これは、事件が最終的に裁判になった場合でも同じです。
事件の結論を決める裁判官は当然医学的知識がありません。その裁判官に対して、被害者の怪我がどのようなもので、なぜ後遺障害が発生したのかを説明しなければいけないのは被害者側の弁護士なのです。これができなければ、当然主張する後遺障害に対する損害賠償は認められません。
以上から、後遺障害の申請は、交通事故から早期の時点で、交通事故を多く扱う弁護士に依頼されることをお勧めします。