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交通事故において計算される逸失利益とは、どのような損害なのでしょうか?
東京都千代田区において、交通事故事件のご相談を多く受ける弁護士が、詳しく解説します。
逸失利益とは、その名のとおり、失った利益のことです。
交通事故に遭い後遺障害が発生すると、交通事故以前と同様には働けなくなる可能性が高くなります。
そのため、交通事故による後遺障害がなかったら得られていたはずの給与、所得を予測し、それを賠償するための項目が逸失利益です。
逸失利益の計算式は、
基礎収入 × 労働能力喪失期間に相当するライプニッツ係数 × 労働能力喪失率
です。1つずつみていきましょう。
基礎収入
基礎収入とは、交通事故被害者の方がいくらの収入を得る見込みがあったかの金額です。
原則として、交通事故前年の源泉徴収票の金額または交通事故前年の確定申告書の所得金額になります。
逸失利益は交通事故がなければ得られていたはずの利益なので、交通事故の影響を除いた金額を基準としなければなりません。そのため、「交通事故の前年」の資料が基準となるのです。例えば、交通事故の発生日が2019年8月1日の場合には、基礎収入の金額は2018年度の源泉徴収票のものとなります。
サラリーマン、OLの方であれば源泉徴収票の金額が基準となります。
自営業者の方は、確定申告書の所得金額が基準となります。
専業主婦、兼業主婦の方は、交通事故当年の女性、全年齢、全学歴の賃金センサスが基準となります。賃金センサスとは、国が調査しているどのような属性の方がどのような収入を得ているかという資料です。
労働能力喪失期間に相当するライプニッツ係数
まず、労働能力喪失期間とは、逸失利益が「働いていれば」得られていたはずの利益であることから、後遺障害が発生した時からあと何年働けていたと考えられるか、という年数です。
基本的には67歳まで働くことを前提としますので、
67歳 - 後遺障害が発生した当時の年齢(症状固定日における年齢)
が労働能力喪失期間となります。
また、67歳以上の方、または年齢が高い方については、簡易生命表の平均余命の2分の1の年数を計算し、その期間の方が上記の式で計算した期間よりも長い場合にはその期間とします。
なお、後遺障害の種類によっては、労働能力喪失期間が短くなることもあります。
特に、認定された後遺障害が痛みの場合は、労働能力喪失期間が14級で5年間、12級で10年間となることが多くなります。
そして、ライプニッツ係数とは、本来逸失利益が未来に発生するものであるにもかかわらず、損害賠償金として1度に支払いを受けることから、その調整を行う係数です。
労働能力喪失率とは、交通事故がなかった状態を100%の労働能力として、後遺障害によりどれだけ労働能力が失われたか、というものです。
労働能力喪失率は自賠責保険において認定された後遺障害の等級に応じて定められているので、原則としてこの%を労働能力喪失率とします。
各後遺障害の等級における労働能力喪失率は、以下のとおりとなります。
等級 | 喪失率 |
---|---|
第1級~第3級 | 100% |
第4級 | 92% |
第5級 | 79% |
第6級 | 67% |
第7級 | 56% |
第8級 | 45% |
第9級 | 35% |
第10級 | 27% |
第11級 | 20% |
第12級 | 14% |
第13級 | 9% |
第14級 | 5% |
なお、後遺障害の種類によっては、この表に定められた労働能力喪失率よりも喪失率が小さくなると判断されることもあります。
後遺障害が逸失利益にどのように影響するかは、交通事故被害者の方が負った後遺障害がどのようなものかをしっかりと理解しておかなければなりません。
そのため、交通事故の損害賠償の請求を行う側である被害者側弁護士は、後遺障害について詳しくなければならないのです。
ところが、依頼をする弁護士によって、その理解度は大きく異なります。