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交通事故で整骨院・接骨院での施術を受ける場合、どのような点に注意しなければならないのでしょうか?
東京都千代田区において、交通事故事件のご相談を多く受ける弁護士が、詳しく解説します。
整骨院・接骨院はどちらも「柔道整復師」が開設している施設です。
「柔道整復師」とは、医療系の専門学校や柔道整復学科がある大学、短大で学んだ後、国家試験に合格すれば取得できる国家資格です。
整骨院・接骨院では、亜急性の骨折、脱臼などの限定的な傷病に対して健康保険を利用して施術を受けることが可能です。
一方、病院は当然医師が開設できる医療機関です。
基本的に健康保険の利用を前提としていて、保険医が行う治療には当然健康保険が利用されます。
このように、整骨院・接骨院と病院は、その治療を行う主体が有する資格が異なるため、全く別の施設です。
交通事故でお怪我を負った場合、病院での治療に加えて整骨院・接骨院で施術を受ける場合があります。特に、通院している病院にリハビリ設備やリハビリスタッフがいない場合には、病院でリハビリを行うことが難しいため、整骨院・接骨院での施術を病院でのリハビリの代わりにする方が多くなります。
ところが、整骨院・接骨院での施術を主に受けていて、病院の受診をしていない場合、交通事故の被害者側に重大な不利益が生じることがあります。
整骨院・接骨院で主な施術を受けている交通事故被害者の方の場合、弁護士が相談を受けた時点で病院への通院が1か月以上途切れている場合があります。
この場合、弁護士が最も懸念するのは、後遺障害の等級が適切に認定されないことです。
交通事故の後遺障害は、等級が認められるか認められないかで被害者に支払われる交通事故の損害賠償の金額が数百万円から数千万円もの違いがでる可能性がある重要な事項です。
そして、交通事故の後遺障害の有無を審査する機関においては、原則として整骨院・接骨院での施術は治療とは認められていないと考えられています。
これは、上記のとおり、整骨院・接骨院での施術者が柔道整復師であり、医師でないことから、整骨院・接骨院での施術が治療、受診とは認められていないためです。
すると、病院の受診が1か月以上ない状態であるということは、たとえその間に整骨院・接骨院での施術を受けていたとしても、治療の必要がなくなっていると考えられてしまう可能性があるのです。
このような状態になると、交通事故の後遺障害の申請を行った際に、後遺障害の等級が適切に認定されない可能性が高くなってしまうのです。
かりに弁護士が交通事故事件について依頼を受け、後遺障害の申請を被害者請求で行う場合には、このような事態が生じていることについて定型の資料以外に上申書などを作成して特別の事情を審査機関に伝えることはできます。しかしながら、そのような弁護士の上申書があったとしても、後遺障害の等級の認定の可能性は下がってしまいます。
さらに、病院への通院を終了して治療が終了したとみなされた場合、その時期以降の整骨院・接骨院での施術料は治療費として支払われる可能性がかなり低くなってしまいます。
もっとも、これは整骨院・接骨院での施術を受けることを否定するということではありません。特に病院にリハビリ施設がない場合、整骨院・接骨院での施術によって症状が改善される方もいらっしゃいます。
ただ、その場合であっても、必ず病院への通院を継続する必要があるということに注意していただきたいと思います。
整骨院・接骨院での施術には当然施術料がかかります。
交通事故の怪我に対する施術の場合、交通事故加害者側の保険会社が治療費を払うといえば自由診療で整骨院・接骨院から保険会社に対して施術料の請求が行われます。
ところが、整骨院・接骨院での施術料は、示談交渉の際に問題となることが多いのです。
交通事故加害者側の保険会社が施術開始時に施術料を払うと言ったとしても、この払うという言葉の中には「怪我に対する施術料として当保険会社が適切と認めるものに限っては(治療費として払う)」という限定がついているのです。
そのため、整骨院・接骨院から保険会社に提出された施術料の請求書は、保険会社による支払いが確約されているものではありません。
しかも、整骨院・接骨院から保険会社に請求書が提出されるタイミングが施術開始から数か月後にされる場合もあり、高額の施術料が発生した後で後から保険会社からこの施術料は治療費として支払えないという連絡が来ることがあるのです。
このような場合、交通事故被害者側は整骨院・接骨院での施術料はすでに治療費として払われていると思っているのに、実は保険会社が施術料を支払っておらず、数十万円から時には100万円を超える施術料が未払いになっている、ということがあります。
整骨院・接骨院での施術を受ける際には、保険会社が施術料を払っているかをしっかりと確認しながら施術を受けることをお勧めします。
病院の治療期間中に交通事故について弁護士が依頼を受けた場合でも同様に、むしろ積極的に保険会社から整骨院・接骨院での施術料を争われることがあります。
これは、弁護士が交通事故の損害賠償の代理人となった場合、損害賠償の計算の基準金額が高くなり、保険会社が最終的に支払う金額が高くなることが一般的であるためです。
そのため、すでに保険会社が払うと言った整骨院・接骨院での施術料について支払いを拒否し、最終的な損害賠償の金額を低く抑えるという保険会社の意図があるのです。
一方、弁護士としても、整骨院・接骨院での施術料は、保険会社に必ず治療費として認めさせることができるというものではありません。
それは、整骨院・接骨院での施術料が、そもそも病院での治療とは違って原則として治療費と認められるものではないためです。
さらに、交通事故の損害賠償請求について示談で決着がつかず裁判を起こす場合には、整骨院・接骨院での施術料を治療費とすることはさらに難しくなります。
裁判においては、整骨院・接骨院での施術料は、医師が指示を行い、施術に効果がある場合に治療費として認めるという扱いになっているためです。
そのため、整骨院・接骨院での施術を受ける場合は、可能な限り、医師に相談し、整骨院・接骨院での施術の指示や許可を得てから施術を受けることが望ましいといえます。
医師の先生が整骨院・接骨院での施術に否定的な場合には、施術に肯定的な先生を探すか、もしくはリハビリができる病院での治療を受けられることをお勧めします。