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交通事故の被害者側には、交通事故と医療の専門の知識がなければ損害賠償の金額が大幅に減額してしまう危険性があります。
こちらでは、実際の事件を踏まえて、交通事故と医療の専門知識がどのように損害賠償の金額に影響するのかをご紹介させていただきます。
Aさんは、相手の車が自分の車に減速もせず突っ込んでくるという悲惨な好通事故によって、かなりの重傷を負いました。搬送された救急病院では命の危険がある傷害について緊急手術がなされ、一命をとりとめました。かなりのお怪我を負われたため、退院して外来の治療で他の病院へ通い始めたのは、交通事故から数か月が経った時でした。
Aさんが弁護士に依頼したのも交通事故から数か月が経ってからでした。そして、依頼を受けた弁護士は、すぐにAさんが受診した2つの病院のカルテを取り寄せました。
2つの病院のカルテを見ると、2つ目の病院で記載されている骨折の診断名が、1つ目の病院では記載されていませんでした。これは、Aさんの負われたお怪我が重症かつ複数にわたり、重症なものから記載されたため、また、骨折に対しては保存療法が選択され、特に治療が行われなかったために交通事故の診断書に書かれる診断として漏れてしまったことによるためであると考えられました。
しかも、治療を続けたところ、Aさんのより重症だったお怪我は後遺障害の対象から外れ、記載されていない骨折でしか交通事故の後遺障害が認定されない状態となってしまったのです。
これに加えて、2つ目の病院で作成してもらった後遺障害の申請用の診断書には、多くの診断名が記載されていますが、一番重要な骨折の診断が漏れてしまっていました。
これに対して、まず弁護士は、2つ目の病院で作成してもらった後遺障害の申請用の診断書について、記載漏れを指摘して加筆修正をしてもらいました。さらに、1つ目の病院の診断漏れについては、事故前には骨折の受診歴がないことを弁護士から指摘したうえ、画像の鑑定会社を利用して、骨折部位の状態から、交通事故の際に骨折したと考えられるとの医師の意見をもらい、申請を行いました。
これにより、無事交通事故の後遺障害が認定されました。
Aさんの場合、不運にも2重に診断書の記載漏れがあり、診断書をそのままの形で申請を行った際には当然後遺障害は認定されませんでした。そして、弁護士が示談の交渉を行った結果、最終的なAさんに対する交通事故の損害賠償のうち、後遺障害の部分は約1500万円であり、交通事故と医療の専門知識がない弁護士が事件を担当した場合には危うく1500万円の損害を被るところでした。カルテや診断書の確認の重要性を改めて認識した件でした。
Bさんは車にはねられるという交通事故に遭い、腕を骨折してしまいました。治療を続けて、違和感を感じるもののある程度は回復して、これから交通事故被害に対する損害賠償の話をしていくという段階で弁護士が担当させていただくことになりました。
Bさんが感じている違和感については、後遺障害が認定されないことが予測されました。そこで、弁護士から骨折した腕近くの手首の動きは問題ありませんか、とご本人に尋ねたところ、動きは特に気になっていないとのことでした。
そのため、弁護士とBさんとで話し合い、交通事故の後遺障害の申請は行わずに、後遺障害がないことを前提に交渉を行うことになりました。
ですがこのままですと交通事故によって日常生活に不自由を感じているにもかかわらず、それについては何の補償もされません。その部分について主張できる手掛かりがないか、手術の内容等も踏まえて検討しようと思い、弁護士はBさんのカルテを取り寄せました。
弁護士がBさんのカルテを見たところ、特に違和感については主張できそうなものはありませんでした。ところが、その一方で、ご本人は特に気になっていない手首の動きが、カルテの記載では明らかに障害が残っているのです。
そこで、弁護士はBさんに交通事故による怪我で手首の動きが悪くなっている可能性を説明し、後遺障害の申請用の診断書を作成することにしました。完成した診断書を見ると、手首の角度が後遺障害の認定基準を満たしていました。
Bさんは、交通事故事故の直後に手術を行い手首を固定する状態が長く続いたため、動かない状態に慣れてしまっていて手首の動きが悪くなっていることに気が付かなかったのです。
当然後遺障害は認定され、弁護士が交渉を行った結果、後遺障害部分だけで約500万円の損害賠償金が支払われました。
客観的資料の重要性を改めて感じた件でした。
Cさんは、交通事故による骨折によって関節の動きが悪くなり、後遺障害が認定されていました。この件は裁判所の手続きを利用した調停で話し合いを行っていました。
調停とは、裁判所の中で調停委員と双方当事者が話し合いを行い、解決を目指すという手続きです。そのため、通常調停委員の方々は中立で、どちらにも譲歩を求める姿勢となります。
何度か期日を行った後、相手方の弁護士は交通事故の後遺障害の部分について約1300万円の減額を求めてきました。しかも、その内容が後遺障害が回復するかもしれないから、というものなのです。
交通事故における後遺障害とは、十分な治療を行ってもなお症状が残存することを前提に認定されるものですから、当然その障害が続くことを前提に交通事故被害に対する損害賠償を計算します。相手方の弁護士の主張は医学の常識だけでなく交通事故の損害賠償実務の常識を踏まえない荒唐無稽なものでした。
そのため、担当弁護士は、そもそも交通事故における後遺障害とはどのような概念なのか、Cさんのお怪我がどのようなもので、診断書からどのような状態であることが読み取れるのか、そして、その状態が医学的にどのように説明されるのかを医学書籍を証拠として提出した上で丁寧に主張しました。
すると、通常中立の姿勢を崩さない調停委員と裁判官が、こちらの主張を全面的に支持してくださり、相手方弁護士に対して相手方の主張が当然排斥されるものと説得してくださいました。
これにより、ほぼこちらの弁護士の主張が全面的に呑まれた内容で調停が成立しました。
相手方のあまりに理不尽な主張に怒りを覚える一方、合理的な判断をしてくださった調停委員の方々と裁判官に感謝した件でした。
Dさんは暗い道路を進行中、駐車車両の間から突然飛び出してきた交通事故の相手方を避けきれず接触してしまいました。このような交通事故の状況では、避けきれないにもかかわらずDさんの方が交通事故の加害者となってしまうのです。しかも、Dさんはこの交通事故により大きなお怪我を負いました。
Dさんが救急隊員に搬送される際、相手方の状態を尋ねたところ、相手は飲酒をしているようだといわれました。
Dさんの件は裁判所で争うことになり、弁護士から相手方の飲酒を主張しましたが、相手方弁護士は飲酒の事実を否定します。事故の相手方本人の救急搬送記録やカルテは、相手方の同意がなければ取り寄せができません。しかし、救急搬送された患者は必ず意識状態を確認されるため、飲酒が疑われる患者の場合には意識状態の低下が脳の損傷によるものであるか飲酒によるものであるかを判断するために飲酒の事実をカルテに記載することがあります。
そのため、弁護士は裁判所に対して、裁判所が相手方本人のカルテを取り寄せてほしいと申し出ました。ところが、裁判官はカルテに飲酒の事実が記載されている確証がないことを理由に、カルテの取り寄せを渋ります。裁判所がカルテを取り寄せた場合、そのカルテは基本的に証拠として提出されるため、証拠が膨大な量になるのです。そのため裁判官はカルテの取り寄せに消極的でした。しかしこちらとしては、相手方の飲酒の証拠はカルテしか可能性がありません。弁護士から裁判官に何度も主張し、ようやくカルテの取り寄せが決まりました。
そして、相手方のカルテ約300枚が開示され、弁護士がそのすべてに目を通したところ、相手方本人が病院で飲酒の事実を認めている1文を認めました。弁護士からカルテで証拠を見つけたことをDさんに連絡したとき、とても喜ばれ嬉しく思いました。
弁護士からそれを証拠とし、ほかの事実も挙げ、最終的にDさんが交通事故の被害者側であるという過失の内容で和解がなされました。
Eさんは、交通事故で車にはねられて、大腿骨(股関節を構成する骨)を骨折しました。すぐに手術を受け、リハビリを行いましたが、股関節の動きは悪くなりました。しばらく治療を継続しましたが、関節の動きに改善がみられないため、交通事故の後遺障害の申請を行いました。
申請のための診断書では、関節の動きが悪くなっている記載がありました。しかしながら、等級の認定は関節の動きと事故による怪我は関係がないというものでした。
このタイミングで弁護士が事件を担当させていただくことになりました。
Eさんのお怪我と股関節の動きの悪さは、医療従事者でありかつ弁護士でもある井上からみれば当然関連性のあるものです。しかしながら、交通事故の後遺障害の認定は基準を満たしていても、等級の認定がなされないという理不尽な結果がでることが多々あるのです。
このまま認定を前提とした交通事故に対する損害賠償の請求を行うと、賠償の金額が数百万円単位で減額されてしまいます。そのため、弁護士はEさんと相談し、再度等級の認定の申請(これを「異議申立て」といいます)を行うことにしました。
ところが、1度認定された等級を再度の申請で覆すことができる確率は非常に低く、約6%、つまり100件の再申請で6件しか認定されないという状況です。
(保険料率算出機損害構が発行する「自動車保険の概況(2014年度)」の30pに具体的な件数が記載されています。)
そのため、1度行われた交通事故の後遺障害の認定を覆すには、被害者側が主張している等級が客観的に正しいという証拠が必要になります。
まず、弁護士は、Eさんの入院から外来に至るまでのすべてのカルテと画像を検討しました。そして、Eさんの股関節の動きの状態を時系列でみると、通常の回復過程を経ていて、特に怪我と関節の角度の低下についての関連性を否定する事情がないことがわかりました。さらに、Eさんの股関節のレントゲン写真からは、Eさんの大腿骨が変形して癒合していることがわかりました。
もっとも、大腿骨の変形の状態は、それ自体で等級に認定されるものではありません。
そこで、弁護士は、Eさんの主治医の先生と面談をさせていただき、大腿骨の変形癒合と関節の角度制限について関連性があるというご意見を書面にしていただきました。
さらに、弁護士は、Eさんの手術前の骨折の重症度と、その後の手術が関節の角度の低下にどのように影響を及ぼしているかを、医学的知識がない方でもわかるように基本的なところから丁寧に証拠をつけて説明する書面を作成しました。
これには、弁護士が学生の際に師事していた教授が動物実験(人体の関節角度の低下については対照実験ができない、つまりまったくリハビリをしない人をつくることができないため、動物実験の範囲でしか医学論文が存在しません)を行った研究を書籍として執筆されていたので、証拠として添付しました。
弁護士が提出したこれらの証拠と主張書面により、無事再度の申請は6%の壁を突破し、Eさんの関節の動きの低下と交通事故による骨折との関連性は認められました。これにより、Eさんは交通事故に対する損害賠償として、正当な金額の賠償を得ることができました。
この件では、Eさんの主治医の先生が非常に好意的に弁護士のお話をきいていただいたおかげで、必要とするご意見をいただくことができました。医師の先生方は非常にお忙しく、面談のお時間をとっていただくことが難しいため、面談にご協力いただけて大変感謝した件でした。