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自由診療と健康保険の利用

自由診療とは

自由診療とは、その名のとおり、病院がその処置に関して請求する治療費を自由に設定できるというものです。

通常の治療費は健康保険によってまかなわれていますので、1つの処置により請求できる治療費は厚生労働省によって厳格に診療報酬が定められており、これに基づいて計算がされます。

病院を受診した時、治療費の支払いと同時にもらえる診療報酬明細書を見てみると、それぞれの項目に「〇〇点」と記載してあります。健康保険の治療費の計算の仕方は、この点数が1点につき10と定められています。

例えば、「初診料 282点」であれば、実際の治療費は

282点 × 10円 =2,820

ということになります。

自由診療とは、この1点につき〇円のところを病院が決めることができる、ということなのです。

とはいえ、健康保険で1点につき10円のものを100円と定めることはできません。

 

交通事故における自由診療では、1点につき20円に定めている病院が多いと思われます。

つまり、通常の怪我の場合と比較して、病院は2倍の治療費を請求できることになります。

 

病院によっては、労災の場合に準じて健康保険の1.2倍の1点につき12円で計算しているところもあります。

交通事故で自由診療が行われる理由

一般的には、自由診療という言葉は美容外科などで耳にされることが多いかと思います。

美容外科などで自由診療が採用されているのは、治療の対象が疾患ではないため、国民の負担で運用されている健康保険制度を利用することはできないこと、病気ではなく趣味嗜好の範囲の事柄なので、需要と供給に基づいて料金が設定されることに問題がないことが理由です。

一方、交通事故によって負った怪我に対する治療費が自由診療となるのは、本来その事故の被害者が怪我を負ったことについての責任が交通事故の加害者にあるため、健康保険制度を利用することが不適切であることが1つの理由です。

そして、もう1つの理由は、交通事故の被害というものは、怪我の状態が重篤であり緊急に治療が必要であることが多いこと、被害者に意識がないことも多く全身の検査を行わなければならないことが多いことから通常の病気に対する治療と比較して医療コストが非常にかかることです。

前述のように、病院が患者に請求できる治療費は診療報酬という制度で定められています。そのため、交通事故の怪我に対する治療がすべて健康保険と同じ治療費しか請求できないとなると、病院は検査や治療を行えば行うほど赤字となってしまい、そのため治療に消極的になってしまうと患者が不利益を被ることになってしまうのです。

このような理由から、交通事故では自由診療での治療が前提とされているのです。

交通事故で健康保険を利用することは被害者にとって

デメリットとなるか

そのように考えると、交通事故で健康保険を利用することは、一見して被害者にとってデメリットばかりのように思えます

しかし、交通事故で健康保険を利用することには、実は被害者側にも大きなメリットがあることがあるのです。

それは、交通事故が起こったことについての責任を被害者側も負う場合、つまり交通事故について被害者にも過失がある場合です。

交通事故の過失割合とは、事故の責任をどちらがどれだけ負うのか、ということです。被害者に過失がなければ、すべての損害は加害者が負うことになりますが、被害者にも過失があれば、損害のうち自分の過失の部分については自分で負担しなければならないのです。

例えば、歩行者の信号が青色の時に横断歩道を渡っていて自動車に接触された場合、当然歩行者の過失は0%です。一方、近くに横断歩道がない道路を歩行者が横断して、直進していた自動車と接触した場合、歩行者には基本的に20%の過失があります。

では、具体的に自由診療の治療費が200万円、治療費以外の損害が600万円、交通事故の被害者の過失割合が20%のときの損害賠償の金額を考えてみましょう。

 

自由診療で治療を受けた場合

自由診療の場合、全体の損害額は

治療費 200万円 + その他の損害 600万円 = 800万円

そのうち相手方から支払われる金額は全体の80%なので、

800万円 × 過失割合 80% = 640万円

治療費は病院に対して支払わなければならないので、被害者に支払われるのは

640万円 - 治療費 200万円 = 440万円

つまり、手元に残る金額は440万円になります。

健康保険で治療を受けた場合

一方、健康保険を利用した場合、治療費は通常自由診療の半額になるので100万円になります。さらに、年齢にもよりますが多くの方の場合健康保険の自己負担割合は3割なので、実際に支払った治療費は100万円の3割の30万円になります。

そうすると、全体の損害額は

治療費 30万円 + その他の損害 600万円 = 630万円

そのうち相手方から支払われる金額は全体の80%なので、

630万円 × 過失割合 80% = 504万円

治療費はすでに病院に対して30万円支払っているので、

504万円 - 治療費 30万円 = 474万円

 

つまり、手元に残る金額は474万円になります。

自由診療の場合の手取り金額 440万円  < 健康保険利用の場合の手取り金額 474万円

ですから、健康保険利用の方が34万円手取り金額が多いことがわかります。

このように、交通事故の過失割合が被害者にもある場合には、健康保険を利用した方が損害賠償の金額が実質的に増えることがあるのです。

そして、交通事故による損害の金額が大きいほど(怪我の状態が重症であるほど)、被害者側の過失割合が大きいほどこの差額は大きくなります。

ですから、交通事故の被害者が健康保険を利用することは被害者のデメリットになるとはいえず、むしろ過失割合が大きい場合には健康保険を利用した方がいいといえるのです。

 

 

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