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交通事故における休業損害とは、どのような損害なのでしょうか?
東京都千代田区において、交通事故事件のご相談を多く受ける弁護士が、詳しく解説します。
休業損害とは、交通事故によって発生する損害の1つで、その名前のとおり、仕事を休業したことによって生じる損害です。
例えば、交通事故によって入院しなければならなかった場合、入院期間については仕事をすることができません。
仕事を欠勤すれば給与の減額につながるので、その減額分が交通事故の損害となるのです。
休業損害を請求するためには、サラリーマンの方の場合は、勤務先に休業損害証明書を書いてもらう必要があります。
これは、相手方保険会社に対して、会社が被害者の給与額と休んだ日にちを証明するために必要なものです。
休業損害証明書の紙は、相手方保険会社から送付してもらいます。
① 前年度分源泉徴収票
前年度の源泉徴収票を提出することで、交通事故前3か月間の給与の額の額が確かなものであることがわかります。
② 休みの内訳
交通事故による怪我のために仕事を休んだ日にちのうち、欠勤や有給休暇等の日数を書きます。
有給休暇で休んだ場合でも、交通事故に遭わなければその有給休暇を別の機会に使えたため、有給休暇で休んだ日にちにも休業損害が発生したことを前提に請求をします。
③ 休んだ具体的な日付
④ 給与の減額の詳細
休業によって具体的にいくらの減額が生じたのかを記載します。
「計算根拠(式)記入欄」には、遅刻、早退などで時給分の減額が生じた場合や、パートの場合などの場合の具体的な減額分の計算式を記載します。
⑤ 交通事故前3か月間の月例給与
交通事故以前3か月の給与の具体的な金額を記入します。4月に交通事故に遭った場合は、1月から3月までの給与を記載します。
パート、アルバイトの場合は、労働時間、時給などを記載します。
⑥ 社会保険
社会保険からの補償があった場合は、その分損害額が小さくなりますから、その旨を記載します。
⑦ 作成者
休業損害証明書を記載した主体を記載します。社印を押してもらい、記入日なども忘れずに記載してもらいます。
休業1日当たりの金額は、3か月間当たりの1日分の金額を計算します。
具体的には、休業損害証明書の
(本給+付加給)÷90日=基礎日額
で計算します。
休業損害証明書を勤務先にしっかり書いてもらえた場合には、まずは通院終了日または症状固定日までのすべての欠勤日数で計算をします。
基礎日額×休業日数=休業損害
ですが、治療期間が長期に及んだ場合や、怪我の程度がそれ程重くない場合には、休業したすべての日数に休業損害が認められない場合があります。
休業損害がいくら認められるかは、怪我の程度、就業内容、治療の内容によって総合的に判断します。
休業損害については、交通事故の損害として認めらえる期間が争いになることが多く、弁護士が請求したことにより休業損害の増額が認められることもあります。
専業主婦の場合(兼業主婦を含む)
専業主婦の場合は、1日当たりの労働の対価がいくらか、ということが金額に換算しにくくなります。
そのため、かりに主婦業をしないで外で働いていた場合はいくらの収入を得られていたと考えられるか、という観点から、国の調査で判明している全女性・全年齢・全学歴の平均年収(これを「賃金センサス」といいます)を基準にして計算します。
例えば、事故に遭ったのが平成29年だった場合、賃金センサスの金額は377万8,200円なので、
377万8,200円÷365=1万351円
が基礎金額となります。
もっとも、これは弁護士が代理人となった場合の金額の計算方法なので、弁護士がついていない場合に保険会社から提示される基礎日額は、自賠責保険の基準と同額の5,700円と計算されることが一般的です。
また、兼業主婦の場合は、賃金センサスで計算した基礎日額と、実際の基礎日額のどちらが高いかを計算してから高い方で請求することになります。これも、弁護士が代理人となっていない場合は、自賠責保険の日額5,700円と給与の基礎日額のいずれか高い方の金額で提示されることが一般的です。また、その場合は、休業損害証明書を提出することが必要です。
さらに、同居の家族で本人の他に家事を担っている人がいる場合には、その負担状況に応じて基礎日額が減少します。
専業主婦の休業日数は、客観的な資料を作成することができません。
そのため、怪我の重症度や、通院頻度、どの程度の家事を担っていたかなど総合的に判断することになります。
そして、そこで重視されるのは実通院日数です。
実通院日数が多ければ、それだけ重症度が高いということになりますし、物理的にも通院している間は家事ができないことが明らかだからです。
もっとも、実通院日数であればすべての日数が休業損害の対象となるわけではありませんが、示談でも、裁判でも、実通院日数は重視される要素です。
弁護士が担当した場合は、専業主婦(兼業主婦)の基礎日額だけでなく、休業期間についても争い、弁護士が担当する以前よりも増額が認められるケースがあります。
専業主婦であることはなかなか証明が難しいことです。
そのため、専業主婦の休業損害を請求する場合は、専業主婦だと示す証拠が必要になります。1つは、家族構成を知るために住民票を提出します。
もう1つは、配偶者(又は家族の主な生活費を出している方)の源泉徴収票や、確定申告書です。
この2つの証拠で、事故の被害者が専業主婦をしていてもおかしくない環境だ、ということを証明することができます。
自営業者の場合
自営業者の場合、被害者本人が収入についていくらかを申告しても客観性がありません。
そのため、自営業の休業損害の基礎日額は、交通事故の前年の確定申告書の金額を前提として計算することが原則です。
また、そこで収入として計算されるのは、売上金額ではなく、売上から経費を引いた所得金額とすることが一般的です。また、それに固定費を足すこともあります。
そのため、基礎日額の計算は、
前年度の確定申告書の所得金額(+固定費)÷365=基礎日額
として行います。
まれに確定申告を行っていない方がいますが、確定申告書がなければ実際の所得金額での請求は非常に難しくなります。
自営業者の場合は、交通事故によって休業したことの証明が出来なくなります。
もちろん、入院をすれば入院期間中は休業せざるを得ないので、入院期間は休業期間になりますが、通院期間中については、現実に何日休業したかの証明は困難です。
そのため、自営業者の場合は、休業損害を計算する際、実通院日数が非常に重要になります。
通院をしている間は、仕事を行えないことが明らかであるためです。
もっとも、すべての実通院日数が必ず休業日数になるわけではありません。
怪我の程度や、営業内容、治療の内容などを総合的に判断することになります。