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保険会社から「もう治療費は払えません」と言われたときにするべきこと
保険会社からの治療費の打ち切りの話が出た時、どうすればよいのでしょうか?
東京都千代田区において交通事故事件を多く取り扱う弁護士が、詳しく解説します。
保険会社の治療費の打ち切り
交通事故の相手方の保険会社から「もう治療費は払えません」と言われたとき、そのタイミングで弁護士に相談することもできます。
ですが、弁護士に依頼すると費用が問題になるので、相談をためらわれる方も多くいらっしゃると思います(詳しくは、「弁護士費用が心配なときに知っておきたいこと」へ)。
また、費用の問題だけでなく、弁護士への相談を躊躇される方も多くいらっしゃると思います。
そのような方へ、弁護士へ依頼しなくてもできることをお伝えしたいと思います。
現状、交通事故が起こった場合には、被害者の治療費は加害者が加入している保険会社が支払い、被害者は病院の窓口での支払いを行わないことが一般的です。
これを、交通事故における保険会社の「一括対応」といいます。
そのため、保険会社から「もう治療費は払えません」と言われた場合、多くの方がそのタイミングで治療をやめてしまいます。
しかし、それで本当にいいのでしょうか?
ここでは、交通事故の被害者の方にぜひ知っていただきたい、治療をやめるタイミングについてご説明いたします。
治療をやめると決めるのはだれか?
治療をやめると決めることができるのは、当然、交通事故によって怪我を負われた被害者ご本人です。
ところが、いままで相手方保険会社が交通事故の治療費を支払ってきたために、あたかも相手方保険会社が治療終了のタイミングを決めてよいような錯覚におちいってしまうのです。
もちろん、効果がない治療についての治療費を交通事故によって発生した損害ということはできませんから、適切なタイミングで治療を終了できず、数年間治療を継続してしまった場合は、適切な治療の終了時期を超えた分の治療費は被害者が自己負担をすることになります。
それでも、あくまでも、「治療を終了する」と決めるのは、被害者ご自身です。
交通事故から半年未満で治療費の打ち切りがあった場合
交通事故の発生から半年以内に、いまだ症状が残っているのに治療費の支払いを打ち切られた場合、もしくは、「そろそろ症状固定の時期ではないですか」と言われ、後遺障害診断書を作成するように促された場合は、治療を終了してはいけません。
なぜなら、その時点で治療を終了してしまうと、残った症状が交通事故の「後遺障害」であると認定される可能性が極端に減ってしまうためです。
後遺障害は、交通事故の損害賠償の金額を適正なものにするために非常に重要なものです。後遺障害の認定がされなければ、慰謝料を含む損害賠償の金額は大幅に減ります。
そのため、交通事故によって発生した怪我について症状が残っているのに、その時点で治療をやめると、損害賠償の金額が減ってしまう可能性が高くなるのです。
なお、腕や足の切断など、交通事故の後遺障害に該当することが明らかな場合は、半年間の治療を待たずに後遺障害の申請を行っても等級が認定されることがあります。
ただし、後遺障害の等級の申請によって症状固定日が決まりますから、たとえ申請時以降も治療費がかかったとしても、症状固定日以降の治療費は原則として交通事故の損害として認められなくなります。
交通事故から半年以降に治療費の打ち切りがあった場合
交通事故から半年以降に治療費の打ち切りがあった場合には、今後怪我に対する治療が必要か否かを判断する必要があります。
直前数か月間において、通院により怪我の症状に改善がみられたかを考えてみましょう。
症状にそれほど変化がない場合は、そのタイミングで治療を終了し、交通事故の後遺障害の等級の申請を行うことをお勧めします。
なお、交通事故によって脳出血や脳挫傷などが発生し、高次脳機能障害が発生した場合には特殊な事案となります。
交通事故による高次脳機能障害に限っては、症状の回復の観点からも、後遺障害の等級の認定の観点からも、少なくとも1年間治療を継続した後に後遺障害の申請を行う必要がありますので、1年未満で治療費の打ち切りがあった場合でも、治療を継続する必要があります。
交通事故で健康保険を使用できるか?
では、保険会社から治療費の打ち切りがあった後は、どうやって通院を続ければいいのでしょうか?
実は、健康保険を利用して通院をすればいいのです。
交通事故では健康保険が使えない、と言われることがあるかもしれませんが、それは間違っています。
過去に、交通事故が急増し、交通事故による怪我に健康保険が使えるのかが問題になった時期がありました。その際、旧厚生省から、交通事故による怪我についても健康保険が使用できる、と通達が出ています。
健康保険及び国民健康保険の自動車損害賠償責任保険等に対する求償事務の取扱いについて
( 昭和 43 年 10 月 12 日保険発第 106 号)
厚生省保険局保険課長国民健康保険課長から各都道府県民生主管部 ( 局 ) 長宛
なお、最近、自動車による保険事故については、保険給付が行われないとの誤解が被保険者の一部にあるようであるが、いうまでもなく、自動車による保険事故も一般の保険事故と何ら変りがなく、保険給付の対象となるものであるので、この点について誤解のないよう住民、医療機関等に周知を図るとともに、保険者が被保険者に対して十分理解させるよう指導されたい。
(一部抜粋)
ただし、交通事故における治療費は自由診療(病院が治療費を設定できる。健康保険使用時の1.2~2倍の金額としている病院が多い)ですが、交通事故であっても健康保険を使用するためには健康保険診療の枠内で治療を行う必要があります。
そのため、健康保険を使用する以前と以後で、病院で受ける治療内容が異なるものとなる場合もあります。
第三者行為による傷病(災害)届の手続き
また、交通事故によって発生した治療費は、本来加害者が負担するべきものです。
そのため、被害者が交通事故による怪我について健康保険を使用する場合には、治療費の一部を負担した健康保険組合が、後から加害者に対して治療費の支払いを請求できるようにする必要があります。
そのため、被害者は、交通事故による怪我で健康保険を使用する際は、健康保険組合に対して、交通事故の概要や加害者の連絡先を提出する必要があります。
これを、一般的に「第三者行為による傷病(災害)届」といいます。必要書類や書式は、各健康保険組合によって異なります。
この届出を行うには、ご自身の健康保険の被保険者証に、健康保険の保険者の連絡先が記載されていることが一般的ですので、そちらへ連絡し、交通事故で負った怪我について健康保険を使用する旨を連絡すると、必要な書類一式を送付してもらえます。
健康保険組合は、病院に対して治療費の一部を支払ったのち、交通事故の加害者側(一般的には保険会社)に対して治療費の支払いを請求します。
治療費の最終的な負担
交通事故によって発生した怪我の治療に健康保険を使用した場合は、治療費について自己負担部分が生じます。
その治療費は、交通事故の被害に対する損害賠償請求の交渉の際、治療費として請求をしますので、原本を保存しておく必要があります。
最終的に相手方保険会社がいつまでの治療費を負担するかについては、
となります。