交通事故による骨折後のしびれ
     /ハビリス法律事務所(東京都千代田区)

目次

    感覚の感じ方

    神経の損傷

はじめに

交通事故にあってしまい腕や足、その他の骨を骨折して、その後にしびれの後遺障害が発生した場合、交通事故の損害賠償の観点からどのようなことに注意すればよいのでしょう?

ここでは、交通事故の治療や賠償について困っている被害者の方に知っておいてもらいたいことを、東京都千代田区において交通事故事件のご相談を多く受ける理学療法士かつ弁護士が、詳しく解説します。

しびれの原因

感覚の感じ方

そもそも、しびれという後遺障害はどのような理由で発生するのでしょうか。

まず、しびれというのは感覚障害の一種です。

人間の皮膚における感覚は、

感覚の種類
触覚 触っている、触っていないことを感じる感覚
圧覚 皮膚が押さえつけられる感覚
振動覚 振動していることを感じる感覚
温覚・冷覚 温度を感じる感覚
痛覚 痛みを感じる感覚

などに大きく分かれます。

これらの感覚はそれぞれその刺激を感じるセンサーが皮膚の下にあり、そのセンサーからの刺激が感覚神経を通じて脳に伝わることで初めて感覚としてとらえられます

 

そのため、感覚神経は常に身体の末端から中枢(背骨を伝って脳へ)へ刺激が伝わります。

デルマトーム

どの背骨と背骨の間から出た神経がどの部分の皮膚の感覚を支配するかも決まっており、その支配関係をデルマトームといいます。

脳には感覚神経の情報を処理する決まった部分があり、ここに感覚神経からの刺激が届いて初めて身体のどの部位で感覚が発生しているかが認識されます

 

脳のどの部分が身体のどの部分の感覚を認識、処理するかもきまっており、この位置関係を示した図が右の図です。

神経の損傷

このように、身体の皮膚の一部で感知された感覚は、神経細胞によって感覚のセンサーから背骨に守られている脊髄を下から上へ伝わり、それが脳の特定の部位に至ることで認識されています。

ところが、交通事故による衝撃そのものや、それによって骨折などが起こった余波で、その感覚を伝える神経細胞が途中で傷害を受けることがあります。

神経細胞は電気信号を伝える電線のような役割を果たしており、この神経細胞の軸索(電線部分)に交通事故の衝撃によって傷がついたり、神経細胞自体がちぎれてしまったりすると、感覚を伝える電気信号が脳まで正しく届かなくなってしまいます

そうすると、本来脳では本来届くはずの電気信号を受け取れなくなったり、異常な電気信号を認識することになります。これが、しびれとして認識されるのです。

 

しびれという感覚異常は様々な理由で起こりますが、交通事故で起こるしびれは、このような神経損傷によって起こることがほとんどです。

しびれの回復過程

交通事故によって切断されてしまった感覚神経は、通常切断の数日後、まずは切断された部位よりも先の軸索(電線部分)が萎縮します。これは神経細胞本体からの栄養が絶たれるために、電線部分を包んでいるミエリン鞘という部分が壊れ、軸索がなくなってしまうために起こります。これをワーラー変性といいます。

そして、損傷部分ではシュワン細胞が増殖し、神経細胞の再生の準備をします。

交通事故から数週間後、切断された軸索の神経細胞側から出芽がみられ、軸索となる側芽が伸びていきます。この側芽は、1mm/日の速度でもともとその神経細胞が支配していた場所へ伸びていきます。

または、交通事故で損傷を受けなかった近くの軸索から副次的側芽が、損傷を受けた部分に伸びてくることもあります。

これらの神経細胞の再生の進行状況によって、神経の走行に沿って皮膚を軽く叩くと、軸索が伸びている部分ではチクチクした感覚が生じます。これをホフマン・ティネル徴候といいます。これは神経細胞が再生していくときに特徴的な反応です。

交通事故から数か月後、通常の神経細胞の再生が起これば、再生は完了します。軸索は感覚のセンサー部分まで到達し、再度感覚を伝えるようになります。

そして、交通事故で損傷し、結局再生できなかった部分の軸索と側芽は消失します。

 

ところが、このような神経細胞の再生が正常に行われないことがあります。

交通事故による神経細胞やその周辺細胞の損傷が大きく、組織の瘢痕化などが起こると、正常な位置に軸索を伸ばそうとする再生が邪魔され、本来の場所まで神経細胞をつなげることができなくなるのです。

そうなると、軸索が伸びても結局感覚のセンサー部分まで神経細胞が届かなくなり、損傷を受けた神経細胞が支配する部分の感覚は正常に認識することができなくなります。

このような現象が起こると、交通事故から数か月や数年が経っても、交通事故によって生じたしびれの症状が続くこととなるのです。

 

神経細胞が正常に伸びている場合は、上記のようにティネル徴候が生じますから、もし交通事故から数か月が経ってもティネル徴候が起こる位置に変化がなかったり、数年経ってもしびれの症状に変化がない場合は、その症状はその後も残る可能性が高くなります

しびれについての後遺障害

このように、交通事故によって感覚神経に損傷が生じ、その後の神経細胞の再生が上手くいかない場合だと、しびれの症状がずっと続くことになります。

そのような場合は、しびれという症状自体が交通事故の後遺障害ということになります。

後遺障害とは、交通事故によって生じた症状が、治療によっても残ってしまった場合のその症状の事です。

交通事故の後遺障害は、その症状によって段階分けがされており、しびれも交通事故の後遺障害として認められています。

 

交通事故によるしびれの後遺障害は、第1213号か、第149号に定められています。

 

しびれについての後遺障害
1213 局部に頑固な神経症状を残すもの
149 局部に神経症状を残すもの

 

2つの後遺障害の等級の文言上の違いは、「頑固な」神経症状があるかないかです。

しかし、交通事故のしびれの症状がどちらの後遺障害の等級に認められるかは、実際には客観的な所見が認められるかどうかによって決められています。

つまり、医学的に理由があると認められる交通事故によるしびれが第1213号に認定され、医学的にはしびれが交通事故によって発生したとまでは認定できないけれども、交通事故以降しびれの症状の訴えが続いていると認められる場合には第149号と認定されています。

その一方で、交通事故後からしびれの症状が続いている場合であっても、それが後遺障害の判定に使用される診断書や資料に正確に記載されていなければ、交通事故による後遺障害とは認められない、と後遺障害には「非該当」という認定をされることもあります。

そのため、交通事故によって生じたしびれがしっかりと後遺障害だと認定されるためには、そのしびれという症状が交通事故によって生じたものであると医学的に証明する必要があります

そのためには、たとえばしびれの症状がでている部位が、交通事故によって傷害を受けた部分と神経学的に矛盾がないだとか、神経細胞の再生の経緯などを追うことが必要になります。

これらの情報は、単に医師の先生に交通事故の後遺障害のための診断書を書いてくださいとお願いして記載してもらった診断書には通常現れないものなので、交通事故の被害者側でそれらの情報を補足して準備する必要があります。

 

そのため、交通事故でしびれの後遺障害が生じた場合には、特に被害者側の弁護士に医学的知識が必要となり、後遺障害として認定されるために用意するべき資料も必要となります。

 

 

後遺障害の認定の方法

後遺障害の認定方法には、「事前認定」と、「被害者請求」という2つの方法があります。

この2つの方法のうち、当事務所では被害者請求の方法を推奨しています。詳しくは、下のリンクページをご覧ください。

交通事故の被害者の方には、ぜひ被害者請求で後遺障害の等級の申請を行ってもらいたいと思います。

そしてその際には、必ず交通事故に加えて医療知識に詳しい弁護士を探していただき、積極的な後遺障害の等級の申請を行ってもらいたいと思います。

交通事故の件を弁護士に相談した際に、「後遺障害の認定が出てからもう一度相談に来てください」という場合は、被害者請求での後遺障害の申請を行っていないと考えられます。

 

ぜひ、「後遺障害の申請の前に相談してください」という弁護士を探していただきたいと思います。

弁護士に相談するタイミング

交通事故によるお怪我は、発生からすぐのタイミングで診断、治療が開始されることが理想です。

ところが、重症なお怪我を負った患者さんの場合、1番重症な怪我やその次に重症な怪我については診断と治療がされていても、それ以外の怪我について診断がされておらず、後からその診断されていない怪我について後遺障害が発生するということがあります。

また、診断はされていてもMRIの検査がされていないために、後から怪我の存在自体が疑われるということもあります。

そのため、交通事故からできるだけ早い段階で医療知識に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。

さらに、上に記載したとおり、後遺障害の認定の申請をするためには、正確な医療知識が必要不可欠です。後遺障害の申請のタイミングでどのような資料を準備できるかが、交通事故の損害賠償の金額を大きく左右します

しかも、一度後遺障害の等級の認定が決定されてしまうと、それを覆すのは容易ではありません。認定された等級について異議を申し立てる制度自体はありますが、その制度によって等級が初回の認定よりも重症だと認定される可能性は5%未満なのです。どれほど初回の後遺障害の申請が重要かお分かりいただけると思います。

 

そのため、遅くとも後遺障害の申請をする前のタイミングでは弁護士に相談するとよいと思います。また、相談の際にはできるだけ医療知識に詳しい弁護士に相談されるとよいでしょう。

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