交通事故による骨折後の関節の動きの制限
     /ハビリス法律事務所(東京都千代田区)

目次

    後遺障害とは

    事前認定とは

    被害者請求とは

はじめに

交通事故に遭ってしまい腕や足の骨を骨折してしまった場合、何をしていけばいいのでしょうか?

ここでは交通事故の治療や賠償について困っている被害者の方に知っておいてもらいたいことを、東京都千代田区において交通事故事件のご相談を多く受ける理学療法士かつ弁護士が、詳しく解説していきます。 

骨折後の治療

交通事故のお怪我について、最も大切なことは、骨折した場所が問題なく動くようにリハビリテーションをしっかり行うことです。

当事務所の弁護士は、弁護士になる前に理学療法士というリハビリテーションを専門に行う仕事をしていましたので、交通事故の骨折後のリハビリテーションの重要性を何よりもお伝えしたいと思います。

交通事故による骨折に限らず、骨折後に骨が癒合(ゆごう)するまでの期間は骨折した骨が元の位置でくっつくように、ギプス等で固定します。

 

そして、この骨折した場所の固定は、治療のために必要不可欠なのですが、この固定によってさまざまな弊害が生じてしまうことが多いのです。

関節が動かなくなる理由

交通事故の骨折について、リハビリテーションをしても発生してしまうのが、関節が動かないという問題です。

ヒトの関節の動きは、骨、靭帯、関節を覆っている関節包、筋肉、皮膚等によって発生します。通常であれば関節の動きはそれぞれの関節によっておおよそ決まった範囲動くようになっているのですが、交通事故後にギプスによって固定すると、元々は柔らかかった部分が硬くなってしまい、骨がくっついて動くようになったとしても筋肉や皮膚などの組織が硬くなってしまい関節を元通りに動かせなくなるということがあります。

これを関節可動域制限といいます。

関節可動域とは、それぞれの関節の動く範囲のことで、制限とはその名の通り関節の動きが制限されていることです。

交通事故に限らず、骨折後の骨はギプス固定しますが、医師からの許可が出た時点から関節を動かすリハビリテーションを行っていきます。

ところが、このリハビリテーションをしっかり行わないと、関節の運動によって伸ばされるはずの筋肉や皮膚が、古くなったゴムのように固くなり、骨の動きと一緒に伸びなくなるのです。

交通事故の後に関節が動かせなくなった原因の多くは、この本来柔らかいはずの組織が硬くなってしまったことによるものです。

まれに、骨折した骨が本来の関節の凸凹にしっかりはまらなくなり、関節が動かせなくなることもあります。

または、骨折後しばらくは動かせていた関節を、動かすときに痛みが出るために動かしていなかった場合にも、後から関節の動きに制限が出てくることがあります。

そのため、交通事故で骨折した際にもっとも大事なことは、リハビリテーションをしっかり行って関節の動きを保つことになります。

関節の動きについては、交通事故が発生してから6か月から1年程度の間に回復することがほとんどで、それ以降の期間については関節の動きが改善することは多くありません。

もっとも、これも個人差がありますので、重大な事故で多くの場所を怪我したような方については、1年を超えて回復していく患者様も実際にいらっしゃいます。また、骨折した骨にボルトやスクリューを入れて固定した方については、それらを身体から取り除く手術をした後に関節の動きが改善する場合もありますので、回復する期間に絶対の目安があるわけではありません。

 

また、交通事故から1年を超える方についても、リハビリテーションを受けなくなったら関節の動きが悪くなる場合がありますので、いい状態をしっかりキープできるように、自宅でもできるリハビリテーションを担当の理学療法士、作業療法士に教えてもらうとよいと思います。

交通事故の相手方との交渉

交通事故の怪我の治療が終わった時から(または相手方から一方的に治療が終了だと言われた時から)交通事故についての損害について賠償の交渉が始まります。

一般的には交通事故の直接の相手方ではなく相手方が加入していた保険会社の担当者か、その担当者から変更された保険会社側の弁護士との交渉になります。

ところが、交通事故の相手方と交渉をする前に、交通事故の被害者は重要な手続きをしなければなりません。

 

それが、後遺障害の等級の認定です。そして、ここからが被害者側弁護士の重要な仕事になります。

後遺障害とは

「後遺障害」とは、交通事故後から治療をしっかりと受けていたにもかかわらず、関節が動かない、しびれ・痛みが残ったなどの症状が残ってしまった場合に、その症状を1つの障害だとみなす制度です。

そして、「等級」とは、その後遺障害がどの程度重症なものかを指し示す目安となるものです。

交通事故によって損害が生じた場合、その損害の金額は後遺障害の等級がいくつなのかによって計算されます。

そのため、後遺障害の等級がしっかりと認定されるか否かは、交通事故の損害賠償の金額に直接的に影響を及ぼします

つまり、交通事故によって生じた後遺障害が重症なものであっても、重症な等級だと認定をされなければ、損害賠償の金額が低くなってしまうのです。場合によっては、後遺障害自体が発生していないと認定されることもあります。

そして、交通事故による骨折後に関節の動きが悪くなったという後遺障害については、原則として関節の角度が元気な側の関節と比べてどの程度動かすことができるかという基準で後遺障害の等級が認定されます。

このとき、どの程度動かすことができるかという意味は、医師やリハビリテーションのセラピストが患者さんの関節を動かして記録します。これを他動運動における関節可動域といいます。

交通事故の患者さんは数多くいらっしゃるため、後遺障害の等級は客観的な指標によって決められることが望ましいとされています。それにより、関節の動く範囲(関節可動域)も患者さん本人が動かした場合ではなく、医療スタッフが動かした範囲が正確なものとされます。

では、後遺障害がどのように認定をされているのかご説明します。

後遺障害の認定方法には、「事前認定」と、「被害者請求」という2つの方法があります。

 

 

 

事前認定とは

 

「事前認定」とは、交通事故の相手方(加害者側)の保険会社を通じて行う手続き方法です。交通事故によって生じた治療費は、通常相手方の保険会社が直接病院へ支払いますから、保険会社の担当者からは治療の進捗状況を尋ねる連絡が来ます。そして、交通事故の発生日からだいたい半年後を目途に、「そろそろ症状固定じゃないですか」という話が保険会社の担当者からあり、後遺障害診断書が送られてきます。

この後遺障害診断書を主治医の先生に書いてもらい、それを保険会社の担当者に送れば、交通事故の被害者としてすることはおしまいです。

あとは関係書類一式を保険会社の担当者が集め、それを今度は自賠責の保険会社へ送付します。その後、損害保険料率算出機構へ資料が送られ、実際の審査が行われます。

審査の結果は自賠責保険、相手方保険会社へと送られ、相手方保険会社の担当者から等級の認定結果が知らされます。

 

これが事前認定の手続きです。

 

メリット

この手続きのメリットは、後遺障害診断書を作成する以外の手続きはすべて相手方保険会社がおこなってくれることです。下に記載しているとおり、もう一つの被害者請求の手続きだと、被害者側で集める資料が多いため用意をすることが大変になります。

 

デメリット

一方、交通事故の被害者側からみたこの手続きのメリットは、手続きの一切を相手方の保険会社が行うため、後遺障害診断書の記載が実際の症状と一致しているかをチェックしないまま診断書が提出されてしまい、誤った記載に基づいて後遺障害の等級が認定されてしまう危険性があることです。

後遺障害診断書の記載は、それが等級に結び付く重要な資料となりますから、しっかりとした医学的知識をもつ者が、現在の症状と一致している記載となっているかを確認してから提出する必要があるのです。そうしなければ、後遺障害の等級が誤って低く認定されてしまい、損害賠償の金額が大きく下がってしまう危険性があります。

さらに、この手続きにおいては、加害者側の保険会社が審査の資料として、後遺障害が認定されない方向に働く資料を添付して提出することができます。保険会社は治療費を支払う際に、交通事故の被害者から病院へ病状について問い合わせること及びカルテ等の医療情報を開示させることについての同意書を取っています。その同意書をもとに、被害者本人が知らない間に医師の意見書などがとられる可能性があるのです。また、主治医の意見書ではなく、保険会社の顧問医の意見書が作られることもあります。

これらの資料は当然、交通事故の損害賠償の金額を下げるために作成されるものですから、被害者にとっては不利な証拠となります。それらが添付されれば後遺障害の等級が下がる可能性がでてきます。

 

もう一つのデメリットは、事前認定の手続きでは、後遺障害の等級の認定がなされても、それに応じた自賠責保険の保険金が支払われないことです。この手続きの主体は相手方の保険会社になりますから、交通事故の損害賠償金を実際に支払った後で自賠責保険へ保険金を請求する流れになるため、認定の時点では被害者側に自賠責保険の保険金は支払われません。

被害者請求とは

被害者請求とは、その名の通り、交通事故の被害者が自ら後遺障害の等級の認定を申請する手続きです。

加害者側の自賠責保険の保険会社へ連絡し、手続きに必要な資料を入手した上で、請求に必要な資料一式を準備して自賠責保険へ送付します。そこから損害保険料率算出機構へ資料が送られ、認定がされます。認定結果は自賠責保険から被害者へ書面で送付され、後遺障害が認定された場合には、等級に応じた自賠責保険の保険金が支払われます。被害者側弁護士が代理人として手続きを行った場合は、弁護士の預り金口座へ保険金の支払いが行われます。 

 

メリット

被害者請求の1番のメリットは、被害者側として適切だと思われる後遺障害の等級に認定してもらうための添付資料をつけることが可能になることです。

後遺障害の等級は、審査機関が送付された一切の資料を勘案して決定するものですから、そこに説得力のある資料が添付されていれば考慮してもらえます。

当事務所では必要と思われるケースにおいて、後遺障害の等級について、色々な資料を添付して適切な等級の認定を促す資料を作成して提出しています。これにより、適切な後遺障害の等級が認定される可能性が上がります。

また、もう一つのメリットは、後遺障害診断書の記載に誤記や誤解を招く記載がないか確認して、必要であれば修正してから審査機関に提出することができることです。医師の先生が症状をしっかりと把握していても、実際の関節の角度を測るセラピストが測り間違えたり、または記載を間違えたりすることがあります。それに加えて、診察において口にした一言が全く違う意図で医師の先生に伝わってしまい、実際の症状とは異なる記載がされることもあります。

そのため、後遺障害診断書をしっかりと読める被害者側弁護士が、診断書をしっかりとチェックしてから審査に提出できるということは大きなメリットとなります。

実際に、当事務所の弁護士は、後遺障害診断書について誤記や修正が必要な個所について医師の先生にご説明して、修正していただき、適切な後遺障害の等級が認定された事例を多数経験しています。

さらに、交通事故で仕事が思うようにできなくなり、収入が安定しなくなった方については、特に被害者請求で等級が認定された時点で自賠責保険金が支払われるということはメリットになります。

 

デメリット

この手続きのデメリットは、被害者側として経験が豊富な弁護士でなければ、資料を用意することが難しい、という点にあります。

手続きに用意する資料の点数が多いことももちろんですが、この手続きを主体的に進めるためには、正確な医療知識がなければなりません。そのため、当事務所の弁護士のように骨や筋肉、神経や関節の動きについて基礎的知識をもっていなければ、そもそも誤記に気づけない、ということになってしまうのです。

 

 

以上のことから、交通事故の被害者の方には、ぜひ被害者請求で後遺障害の等級の申請を行ってもらいたいと思います。

そしてその際には、必ず交通事故に加えて医療知識に詳しい弁護士を探していただき、積極的な後遺障害の等級の申請を行ってもらいたいと思います。

交通事故の件を弁護士に相談した際に、「後遺障害の認定が出てからもう一度相談に来てください」という場合は、被害者請求での後遺障害の申請を行っていないと考えられます。

 

ぜひ、「後遺障害の申請の前に相談してください」という弁護士を探していただきたいと思います。

弁護士に相談するタイミング

交通事故によるお怪我は、発生からすぐのタイミングで診断、治療が開始されることが理想です。

ところが、重症なお怪我を負った患者さんの場合、1番重症な怪我やその次に重症な怪我については診断と治療がされていても、それ以外の怪我について診断がされておらず、後からその診断されていない怪我について後遺障害が発生するということがあります。

また、診断はされていてもMRIの検査がされていないために、後から怪我の存在自体が疑われるということもあります。

そのため、交通事故からできるだけ早い段階で医療知識に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。

さらに、上に記載したとおり、後遺障害の認定の申請をするためには、正確な医療知識が必要不可欠です。後遺障害の申請のタイミングでどのような資料を準備できるかが、交通事故の損害賠償の金額を大きく左右します

しかも、一度後遺障害の等級の認定が決定されてしまうと、それを覆すのは容易ではありません。認定された等級について異議を申し立てる制度自体はありますが、その制度によって等級が初回の認定よりも重症だと認定される可能性は5%未満なのです。どれほど初回の後遺障害の申請が重要かお分かりいただけると思います。

 

そのため、遅くとも後遺障害の申請をする前のタイミングでは弁護士に相談するとよいと思います。また、相談の際にはできるだけ医療知識に詳しい弁護士に相談されるとよいでしょう。

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