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交通事故の後遺障害について、医学の国家資格を持ち、専門知識を武器に交通事故被害者の味方となる弁護士が詳しく解説します。
交通事故の後遺障害は、治療を受けていればそれだけで適切な認定を受けられるものではありません。被害者の側でしっかりと証拠を作っていかなければ、後遺障害が残っても等級が認定されないことが多々あります。
そのため、後遺障害が発生しそうな重症なお怪我を負われた場合、交通事故から早期に、交通事故と医療に詳しい弁護士にご相談される必要があります。
適切な後遺障害の認定がされなければ、その損害は数百万円から数千万円になることもあります。
適切な損害賠償を得るために、知っていただきたいことがあります。
ここでは、交通事故による眼の後遺障害について、東京都千代田区において交通事故事件のご相談を多く受ける理学療法士かつ弁護士が、詳しく解説します。
1. 視力障害
2. 調節機能障害(ピントが合わない)
(1)眼の調節機能の概要
(2)調節機能障害の後遺障害の基準
3. 運動障害(物が二重に見える、眼球を上手く動かせない)
(1)眼球を動かす筋肉の構造
(2)眼球の運動障害及び複視が生じる原因
(3)運動機能障害の後遺障害の基準
4. 視野障害(見える範囲が狭くなる)
(1)モノを見る仕組み
(2)視野障害の後遺障害の基準
(3)半盲
(4)視野狭窄
(5)視野変状
交通事故によって眼の周囲に衝撃が生じた場合、眼球・まぶたそのものや、眼の機能に関わる神経、筋肉が損傷して、後遺障害が発生することがあります。
交通事故の衝撃によって、頭蓋骨の眼が収まるくぼみ(眼窩)を骨折した場合にも、眼の後遺障害が発生することがあります。
交通事故における眼そのものの障害には、視力障害(遠くのものがみえにくくなる)、調節機能障害(ピントが合いにくくなる)、運動障害(物が二重に見える)、視野障害(見える範囲が狭くなる)があり、まぶたの障害には、欠損障害(まぶたの一部がなくなる)、運動障害(まぶたがしっかりと動かなくなる)があります。
交通事故における両眼の視力障害の基準は、以下のとおりです。
第1級1号 | 両眼が失明したもの |
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第2級1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの |
第2級2号 | 両眼の視力が0.02以下になったもの |
第3級1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの |
第4級1号 | 両眼の視力が0.06以下になったもの |
第5級1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの |
第6級1号 | 両眼の視力が0.1以下になったもの |
第7級1号 | 1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの |
第9級1号 | 両眼の視力が0.6以下になったもの |
1眼の視力障害の基準は、以下のとおりです。
第8級1号 | 1眼が失明したもの |
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第8級1号 | 1眼の視力が0.02以下になったもの |
第9級2号 | 1眼の視力が0.06以下になったもの |
第10級1号 | 1眼の視力が0.1以下になったもの |
第13級1号 | 1眼の視力が0.6以下になったもの |
「失明」とは、眼球を亡失(摘出)したもの、明暗がわからないもの及びようやく明暗がわかる程度の状態を指します。
また、後遺障害の基準となる視力は、眼鏡やコンタクトレンズの装着が可能な場合は、装着した状態での視力となります。
人がモノを見るとき、眼は眼の前の像を、水晶体を通して眼の奥で上下逆に映し出しています。
このとき、ピント調節の役割を行うのが「毛様体筋」と「毛様体小帯」です。
水晶体の上下はそれぞれ毛様体小帯とつながっており、毛様体小帯は毛様体筋とつながっています。
人が近くをみるときは、毛様体筋が収縮し、逆に毛様体小帯は緩みます。これにより、水晶体は元の弾力性によって厚くなります。
反対に、人が遠くを見るときは、毛様体筋が緩み、毛様体筋が緊張することで、水晶体は薄くなります。
このように、毛様体筋が収縮、弛緩することで水晶体の厚みを変え、ピントを調節しているのです。
ところが、交通事故の衝撃によって、眼の周囲や眼そのものを損傷してしまうと、この調節機能が上手く働かなくなってしまいます。
すると、モノを見るときにピントが合わなくなってしまうのです。
この調節機能の低下の程度によって、後遺障害の等級が定められています。
交通事故における眼の調節機能障害についての後遺障害の基準は以下のとおりです。
第11級1号 | 両眼の眼球に著しい調節機能障害を残すもの |
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第12級1号 | 1眼の眼球に著しい調節機能障害を残すもの |
「著しい調節機能障害」とは、調節力が通常の場合の1/2以下に減じたものを指します。
両眼について後遺障害が認められる場合か、怪我をしていない側の眼の調節機能に異常がある場合には、年齢別の調節力値と比較して後遺障害の有無を判断します。
5歳毎年齢の調節力
年齢 | 15 | 20 | 25 | 30 | 35 | 40 | 45 | 50 | 55 | 60 | 65 |
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調節力(D) | 9.7 | 9.0 | 7.6 | 6.3 | 5.3 | 4.4 | 3.1 | 2.2 | 1.5 | 1.35 | 1.3 |
年齢は、「15」の場合は15歳~19歳を示します。
また、交通事故被害者の年齢が55歳以上であるときは、後遺障害は認められません。
1眼のみ障害を負った場合は、怪我をしていない眼の調節力と比較して後遺障害の有無を判断します。
その場合、怪我をしていない眼の調節機能が1.5D以下の場合は、後遺障害の対象となりません。
眼球を動かす筋肉には、1つの眼球につき4つの直筋(内直筋、外直筋、上直筋、下直筋)と2つの斜筋(上斜筋、下斜筋)があります。
眼球の運動障害及び複視が生じる原因
上記のように、眼球は1つの眼球につき6つもの筋肉によって動きをコントロールされています。
そのため、どれか1つの筋肉や、その筋肉を支配する神経が損傷して回復しなかったとき、眼球を上手く動かすことが出来なくなります。
例えば、右眼の外転神経に麻痺がおこった場合、右目の外直筋は動かそうと思っても動かせず、眼球を外側へ動かすことが出来なくなります。
そうすると、正面の右側を見ようとしても、左眼だけが右側へ動き、右眼は正面を向いたままになります。
そして、このような症状があると、複視が生じるのです。
複視とは、物が二重に見える症状です。
通常、人の眼は2つの眼球それぞれにつき、眼の裏側に見えている景色を上下逆に写し、その像を脳で再構成することで1つの画像にしています。
ところが、左右の眼で物の位置にずれがあると、そのずれが解消されずに脳で重ねて再現され、物が二重に見えてしまうのです。
これらの、眼球の運動障害、複視の症状が、それぞれ後遺障害として判断されます。
運動機能障害の後遺障害の基準
交通事故における運動障害の後遺障害の基準は、以下のとおりです。
第10級2号 | 正面を見た場合に複視の症状を残すもの |
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第11級1号 | 両眼の眼球に著しい運動障害を残すもの |
第12級1号 | 1眼の眼球に著しい運動障害を残すもの |
第13級2号 | 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの |
第10級2号 正面を見た場合に複視の症状を残すもの
第10級2号は、以下のすべての基準に当てはまる場合に認められます。
第11級1号 両眼の眼球に著しい運動障害を残すもの
「著しい運動障害を残すもの」とは、眼球の注視野の広さが1/2以下に減じたものをいいます。
注視野とは、頭の位置を固定して、顔を動かさずに眼球を運動させてみることができる範囲をいいます。
注視野の広さは、多数人の平均では1眼で各方面約50度、両眼で各方面約45度です。
第12級1号 1眼の眼球に著しい運動障害を残すもの
第11級1号の基準と同様です。
第13級2号 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
第13級2号は、以下のすべての基準に当てはまる場合に認められます。
モノを見る仕組み
人が眼でみているものは、実は脳では分解されて認識され、かつ、再構成された像です。
まず、眼の前の景色は、水晶体をとおすことで左右逆に反転した状態で眼の裏側に写されます。さらに、この写された像は、左右で異なる神経をとおり、左右の脳に分かれて運ばれます。それらの像が、脳の後頭葉で再構成されて見えている景色として認識されています。
そのため、これらのモノを見る過程のどこかに障害があると、視野のどこかが認識できない、という状態になります。
視野障害の後遺障害の基準
交通事故における視野障害の後遺障害の基準は、以下のとおりです。
第9級3号 | 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの |
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第13級3号 | 1眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの |
それぞれの症状についてみていきます。
半盲
半盲とは、視野のうち半分が見えなくなるという症状です。
障害を受けた位置によって見えなくなる部分が異なります。
左右の眼球から脳に向かう視神経は、それぞれの眼球の内側の視神経について、反対側の脳半球に向かいます。この交差位置を、視神経交叉といいます。
この位置で視神経が傷害されると、それぞれの眼で外側の景色を見ることが出来なくなります。
視神経交叉以降で視神経が傷害された場合は、視野の左側又は右側の半分を見ることが出来なくなります。
視野狭窄
視野狭窄とは、通常の視野と比較して視野の範囲が狭まった状態をいいます。
視野変状
ここでいう視野変状とは、視野の中の一部が真っ黒になり見えなくなるか(暗点)、視野の一部が欠損する状態をいいます。
欠損障害の後遺障害の基準
交通事故における欠損障害の後遺障害の基準は、以下のとおりです。
第9級4号 | 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
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第11級3号 | 1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
第13級4号 | 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの |
第14級1号 | 1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの |
後遺障害 第9級4号:両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
「著しい欠損を残す」とは、まぶたを閉じたときに、黒目部分を完全に覆えない状態を指します。
これが両眼に認められる場合、基準に該当します。
後遺障害 第11級3号:1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
1眼について、まぶたを閉じたときに黒目部分を完全に覆えない状態を指します。
後遺障害 第13級4号:両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
「一部に欠損を残」すとは、まぶたを閉じたときに白目部分が覆えない状態を指します。
これが両眼に認められる場合、基準に該当します。
「まつげはげを残すもの」とは、通常まつげが生えている部分の1/2以上についてまつげはげが認められる状態を指します。
後遺障害 第14級1号:1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
第13級4号の基準が、1眼において認められる場合です。
交通事故における運動障害の後遺障害の基準は、以下のとおりです。
第11級2号 | 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
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第12級2号 | 1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
「まぶたに著しい運動障害を残す」とは、眼を開けようとしたときに瞳孔部分を完全に覆う状態であるか、眼を閉じようとしたときに黒目部分を完全に覆えない状態を指します。
このように、後遺障害の認定は細かく基準が決められているため、お怪我の状態に合わせて適切な検査結果をそろえて後遺障害の申請を行わなければ適切な後遺障害が認定されません。
そのため、後遺障害の申請は、お怪我の状態を正確に把握し、後遺障害診断書などの医学的資料を適切に把握できる弁護士が行うことが理想的です。
ところが、依頼する弁護士によっては、お怪我の状態やカルテ、診断書を正確に把握することができません。
ぜひ、後遺障害に詳しい弁護士にご相談ください。