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交通事故による後遺障害

大腿骨の骨折と後遺障害

大腿骨(太ももの骨)を骨折した場合、骨折の治療や後遺障害はどのようになるのでしょうか。
交通事故事件を多く取り扱っており、医療従事者でもある弁護士が詳しく解説します(当法律事務所の弁護士の経歴はこちらへ)。

大腿骨の構造

大腿骨は、骨の上部の方の近位端、骨の幹の中央部分である骨幹部、下の膝に近い部分の遠位端で構成されています。

 

一番上の骨頭は丸くなっており、この球状の骨が骨盤の窪みにはまる形で股関節を作っています。股関節は関節が丸いために、他の関節と比較してかなり自由度の高い関節といえます。

怪我の種類と治療

大腿骨頚部骨折

人工骨頭置換術の
模式図

通常は高齢者が転倒した際に、手をつくことが出来ず直接転倒の衝撃が大腿骨に伝わった際に生じる骨折です。交通事故で大腿骨頚部骨折が起こる場合は、二輪車や歩行中に事故に遭い、直接大腿骨が衝突の衝撃を受けた場合や、衝突後の転倒による衝撃を受けた場合に生じます。また、自動車乗車中であっても、重大事故の場合は、事故の衝突により乗車中の車体が損傷し、それに伴って座席が破損して骨折することもあります。

大腿骨頚部骨折の重症度は、骨折が骨の幅全体に及んでいるか、骨折した骨に移動があるかで判断されます。

骨接合術の模式図

骨折した骨は骨折部に新たな骨が形成されることで癒合しますが、これには血流が保たれていることが必要です。完全な頚部骨折が起こり、かつ、完全転位(骨折した骨の位置がずれること)が起こると、骨頭への血流が途絶え、壊死が起こることがあります。

そのため、最も重度な骨折の場合は、人工骨頭置換術が行われます。

人工骨頭置換術を施行した場合、特に術後は大腿骨の脱臼が起こりやすくなるため、注意が必要です。その一方で、荷重は早期に可能になるため、早期離床が図れます。

転位のない骨折や、整復(元の骨の位置に戻すこと)が可能な骨折の場合は、スクリューやピンを用いて固定術を行います。1週間以内に離床して、徐々に荷重を増やしていきます。 

大腿骨骨幹部骨折

大腿骨骨幹部骨折は、大腿骨の幹の部分で起こる骨折です。交通事故で直接大腿部に衝撃を受けた際に起こることが多い骨折です。

この骨折に対しては、髄内釘や、プレートを利用した固定術が行われることが多くなります。

髄内固定が行われた場合には、骨折部に圧力をかけて治癒を促進するため、術後早期に荷重が開始されます。

これ以外の固定術では、爪先荷重から部分荷重まで加減し、徐々に荷重を増やしていきます。

大腿骨顆上骨折、顆部骨折

大腿骨の幹の部分よりも下の部分の骨折を、大腿骨顆上骨折、顆部骨折といいます。膝関節の上か、骨折が片側か、両側かで重症度が分類されます。

プレートとスクリューで固定する固定術が行われることが多くなります。

この骨折の場合には、数か月間免荷(めんか。体重をかけないこと)が行われ、徐々に荷重を増やしていきます。

 

後遺障害

概要

交通事故の被害者が上記の怪我を負い、半年以上治療を継続しても障害が残った場合、後遺障害の等級の認定申請を行います。

交通事故による後遺障害について、詳しくはこちらへ→後遺障害の基礎知識

大腿骨の近位端または骨幹部の骨折であれば股関節の運動障害が、大腿骨の遠位端の骨折であれば膝関節の運動障害が問題となります。

運動障害の内容は、健側(けんそく。怪我をしていない側)と比較して、どの程度関節の運動が制限を受けているかで判断します。

股関節であれば外転と内転及び屈曲と伸展の関節可動域(関節が動く範囲の角度)を測定します。

 

該当する主な後遺障害の等級の判断基準は、以下のとおりです。

87 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
1011 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
127 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの

なお、骨折した骨が癒合せず、骨折部が関節のように動く偽関節が生じると、さらに該当する可能性がある等級が増えます。

  • 「一下肢」

一下肢とは、下肢の片側、つまり右側か左側かのいずれか一方の足、という意味です。

  • 「三大関節の一関節」

足の三大関節は、股関節、膝関節、足関節を指します。

 

医療と交通事故の専門知識がある弁護士が事件を担当した場合と、そうでない場合、損害賠償の金額には大きな差が生まれます。具体的な事件について、詳しくはこちら→専門知識の重要性

当法律事務所は、交通事故の被害者の方からのご相談をお受けしております。(当法律事務所の特徴的な取り組みについて、詳しくはこちらへ→当事務所の後遺障害の申請

人工関節・人工骨頭をそう入置換していない場合
  • 1

    87号 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの

「用を廃したもの」とは、関節がまったく動かないときを指します。

関節が動かないときとは、

・関節が強直したもの…強直とは、関節が固まって動かない状態を指します。

・関節完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にあるもの…自分で動かしたときに怪我をしていない
 側(健側)の10%程度以下しか動かせないもの

を指します。

  • 2

    1011号 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの

「機能に著しい障害を残すもの」とは、

怪我をしていない側(健側)の可動域角度の1/2以下に制限されているもの

を指します。

股関節の等級の基準となる可動域は、屈曲/伸展と、外転/内転です。

例えば、怪我をしていない右股関節の可動域が

外転:40度、内転:20度  

であれば、可動域は  

40°+20°=60°

になります。

そして、怪我をした左股関節の可動域が

外転:20度、内転;5度   

であれば、可動域は  

20°+5°=25°

になります。

この場合、怪我をした股関節の可動域が、怪我をしていない関節の可動域60度の1/2の角度である30度を下回っているので、股関節の可動域角度が1/2以下に制限されているといえ、第1011号に認定される可能性があります。

*等級の認定は事故の状況、怪我の程度、回復の状態等を踏まえて判断しますので、関節の角度が等級の判断基準に該当している場合でも必ず等級が認定されるわけではありません。

  • 3

    127号 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの

「機能に障害を残すもの」とは、

怪我をしていない側(健側)の可動域角度の3/4以下に制限されているもの

を指します。

例えば、怪我をしていない右股関節の可動域が

外転:40度、内転:20度  

であれば、可動域は  

40°+20°=60°

になります。

そして、怪我をした左股関節の可動域が

外転:30度、内転;10度   

であれば、可動域は  

30°+10°=40°

になります。

この場合、怪我をした股関節の可動域が、怪我をしていない関節の可動域60度の3/4の角度である45度を下回っているので、股関節の可動域角度が3/4以下に制限されているといえ、第127号に認定される可能性があります。

人工関節・人工骨頭をそう入置換した場合
  • 1

    87号 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの

人工関節・人工骨頭をそう入置換した場合には、「用を廃したもの」の基準は、

股関節の可動域角度が1/2以下に制限されている場合 

を指します。

股関節の等級の基準となる可動域は、屈曲/伸展と、外転/内転です。

例えば、左股関節を怪我して人工関節を挿入した場合、

怪我をしていない右股関節の可動域が

外転:40度、内転:20度  

であれば、可動域は  

40°+20°=60°

になります。

そして、怪我をした左股関節の可動域が

外転:20度、内転;5度   

であれば、可動域は  

20°+5°=25°

になります。

この場合、怪我をした股関節の可動域が、怪我をしていない関節の可動域60度の1/2の角度である30度を下回っているので、股関節の可動域角度が1/2以下に制限されているといえ、第87号に認定される可能性があります。

*等級の認定は事故の状況、怪我の程度、回復の状態等を踏まえて判断しますので、関節の角度が等級の判断基準に該当している場合でも必ず等級が認定されるわけではありません。

  • 2

    1011号 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの

人工関節・人工骨頭をそう入置換した場合には、「著しい障害を残すもの」の基準は、

股関節の関節可動域角度が健側の可動域角度の1/2以下に制限されていない場合

を指します。

つまり、人工関節・人工骨頭をそう入置換した場合には、可動域角度の1/2以下の制限があれば第87号に、可動域の制限がなければ第1011号に認定されることになります。

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